@IDX:19400
@OFF:0xe7
@SPK:
@JPN:　………………。
@ENG:

@IDX:19401
@OFF:0x119
@SPK:
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:19402
@OFF:0x147
@SPK:
@JPN:　……。
@ENG:

@IDX:19403
@OFF:0x1cf
@SPK:
@JPN:　目覚めた途端、強烈な憂鬱感に心が支配される。
@ENG:

@IDX:19404
@OFF:0x20b
@SPK:
@JPN:　今日から、僕は……。
@ENG:

@IDX:19405
@OFF:0x22f
@SPK:
@JPN:　できることなら夢であって欲しいと思ったが、心に　鮮明に残っている記憶がそれを否定する。
@ENG:

@IDX:19406
@OFF:0x2a5
@SPK:
@JPN:　約束では、８時に病院のロビーで待ち合わせという　ことになっていた。
@ENG:

@IDX:19407
@OFF:0x2f7
@SPK:
@JPN:　今は……３０分前……。
@ENG:

@IDX:19408
@OFF:0x31d
@SPK:
@JPN:　冷酷に時を刻み続ける時計を、恨めしいような思い　でジトリと睨みつけ、ノロノロと支度を始める。
@ENG:

@IDX:19409
@OFF:0x39b
@SPK:
@JPN:　死体洗い……。
@ENG:

@IDX:19410
@OFF:0x3b9
@SPK:
@JPN:　それによってもたらされる多額の報酬。
@ENG:

@IDX:19411
@OFF:0x3ed
@SPK:
@JPN:　自分の夢を実現させるための近道。
@ENG:

@IDX:19412
@OFF:0x42b
@SPK:
@JPN:　……本当に？
@ENG:

@IDX:19413
@OFF:0x447
@SPK:
@JPN:　　　　　おそらくは……。
@ENG:

@IDX:19414
@OFF:0x46f
@SPK:
@JPN:　やらなくてはいけないことなのか？
@ENG:

@IDX:19415
@OFF:0x49f
@SPK:
@JPN:　　　　　自分で決めたことだから……。
@ENG:

@IDX:19416
@OFF:0x4d3
@SPK:
@JPN:　納得しているのか？
@ENG:

@IDX:19417
@OFF:0x4f5
@SPK:
@JPN:　　　　　いや……本当は……。
@ENG:

@IDX:19418
@OFF:0x531
@SPK:
@JPN:　終わりのない思考の渦。
@ENG:

@IDX:19419
@OFF:0x557
@SPK:
@JPN:　繰り返される自分への問いかけ。
@ENG:

@IDX:19420
@OFF:0x585
@SPK:
@JPN:　葛藤と打算……妥協、そして逡巡。
@ENG:

@IDX:19421
@OFF:0x5b5
@SPK:
@JPN:　せめぎ合う理性と感情……。
@ENG:

@IDX:19422
@OFF:0x5f1
@SPK:
@JPN:　時計の針が、微かな音を立てて動く。
@ENG:

@IDX:19423
@OFF:0x623
@SPK:
@JPN:　……５分前。
@ENG:

@IDX:19424
@OFF:0x63f
@SPK:
@JPN:時間だ……。
@ENG:

@IDX:19425
@OFF:0x659
@SPK:
@JPN:　確認するように呟くと、病院へと向かった……。
@ENG:

@IDX:19426
@OFF:0x74c
@SPK:
@JPN:　まだ、誰もいないロビー……時折看護婦が行き交う　以外、人の気配は感じられない。
@ENG:

@IDX:19427
@OFF:0x7aa
@SPK:
@JPN:　手本を見せてくれるはずの職員の姿も、まだロビー　にはない。
@ENG:

@IDX:19428
@OFF:0x802
@SPK:
@JPN:　僕が洗うことになる死体とは一体どういうものなの　だろうか。
@ENG:

@IDX:19429
@OFF:0x84c
@SPK:
@JPN:　僕には死体に関する知識がほとんどない。
@ENG:

@IDX:19430
@OFF:0x882
@SPK:
@JPN:　見たことがあるのも、死化粧を施したものだけ。
@ENG:

@IDX:19431
@OFF:0x8be
@SPK:
@JPN:　他にはドラマや映画に出る死体が、僕が知っている　死体の全てだ。
@ENG:

@IDX:19432
@OFF:0x91a
@SPK:
@JPN:　死体洗いにしても、名前は聞いたことがある程度。　その実体は、全く分からない。
@ENG:

@IDX:19433
@OFF:0x976
@SPK:
@JPN:　道具はどんなものを使うのか？
@ENG:

@IDX:19434
@OFF:0x9a2
@SPK:
@JPN:　どこまで洗うのか？
@ENG:

@IDX:19435
@OFF:0x9c4
@SPK:
@JPN:　どうやって洗うのか？
@ENG:

@IDX:19436
@OFF:0x9e8
@SPK:
@JPN:　全ては、これから知る。
@ENG:

@IDX:19437
@OFF:0xa0e
@SPK:
@JPN:　そう、全てはこれから……。
@ENG:

@IDX:19439
@OFF:0xa83
@SPK:［男の声］
@JPN:　すまんが、ちょっといいか？
@ENG:

@IDX:19442
@OFF:0xb45
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい。なんでしょう？
@ENG:

@IDX:19444
@OFF:0xba6
@SPK:［白衣の男］
@JPN:　実はここで人と待ち合わせしていてな……ひょっとしてお前がそうかと思ったんだ。
@ENG:

@IDX:19447
@OFF:0xc2a
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　じゃあ、あなたが……。
@ENG:

@IDX:19448
@OFF:0xc80
@SPK:
@JPN:　死体の洗い方を教えてくれる……そう言いかけて、　慌てて口をつぐむ。
@ENG:

@IDX:19449
@OFF:0xcd2
@SPK:
@JPN:　周りに人はいないが、こんなところで口にしていい　単語ではないだろう。
@ENG:

@IDX:19450
@OFF:0xd26
@SPK:
@JPN:　目の前の男もこちらの意図を悟ったのか、僅かに顔　をしかめている。
@ENG:

@IDX:19452
@OFF:0xdbf
@SPK:［職員］
@JPN:　まあ、そういうことだ。早速だが、行こうか？
@ENG:

@IDX:19455
@OFF:0xe21
@SPK:[\protag]
@JPN:　は、はい！　えっと……。
@ENG:

@IDX:19457
@OFF:0xe7e
@SPK:［職員］
@JPN:　なんだ？　どうかしたか？
@ENG:

@IDX:19460
@OFF:0xece
@SPK:[\protag]
@JPN:　あの、なんてお呼びすればいいんでしょうか。
@ENG:

@IDX:19462
@OFF:0xf3d
@SPK:［職員］
@JPN:　ああ、名前か。俺は鏑木だ。
@ENG:

@IDX:19465
@OFF:0xf8f
@SPK:[\protag]
@JPN:　かぶら……ぎ？
@ENG:

@IDX:19467
@OFF:0xfe2
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そうだ。鏑木正元だ。まあ、よろしく頼む。
@ENG:

@IDX:19470
@OFF:0x1042
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい、よろしくお願いします！　鏑木さん！
@ENG:

@IDX:19472
@OFF:0x10af
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ははは。そんなに硬くなるなよ。今日は俺の作業を見てもらうだけだし、作業自体も簡単なものだ。
@ENG:

@IDX:19475
@OFF:0x1141
@SPK:[\protag]
@JPN:　簡単……ですか？
@ENG:

@IDX:19477
@OFF:0x1196
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、簡単だな。詳しい話はむこうでするから、とりあえず俺についてきてくれ。
@ENG:

@IDX:19478
@OFF:0x1267
@SPK:
@JPN:　ロビーからさらに奥へと入り、患者の使わない区画　の階段を下る。
@ENG:

@IDX:19479
@OFF:0x132f
@SPK:
@JPN:　しばらく歩いて辿り着いたのは、ロッカーの並んだ　殺風景な部屋。
@ENG:

@IDX:19480
@OFF:0x137d
@SPK:
@JPN:　ここで死体を洗う……わけはないが……。
@ENG:

@IDX:19483
@OFF:0x1459
@SPK:[\protag]
@JPN:　ここ……ですか？
@ENG:

@IDX:19485
@OFF:0x14ae
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そんなわけないだろう？　ここは更衣室だ。入る時、向かい側にもドアがあっただろう。そこが仕事場だ。
@ENG:

@IDX:19488
@OFF:0x1546
@SPK:[\protag]
@JPN:　更衣室……ってことは、着替えるんですか？
@ENG:

@IDX:19490
@OFF:0x15b3
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、そうだ。ホルマリンがあるから素手で作業はできん。
@ENG:

@IDX:19493
@OFF:0x1621
@SPK:[\protag]
@JPN:　……分かりました。
@ENG:

@IDX:19495
@OFF:0x1678
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そこのロッカーにツナギと長靴が入っている。ツナギはズボンを脱いで着るといい。
@ENG:

@IDX:19498
@OFF:0x16fc
@SPK:[\protag]
@JPN:　……どれでもいいんですか？
@ENG:

@IDX:19500
@OFF:0x175b
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、構わない。それから今日は見るだけだが、作業をすれば気づかないうちにホルマリンが服につく。捨ててもいい長袖の服を用意しておいた方がいいな。
@ENG:

@IDX:19503
@OFF:0x1821
@SPK:[\protag]
@JPN:　捨ててもいい長袖ですね？　分かりました。
@ENG:

@IDX:19505
@OFF:0x188e
@SPK:［鏑木］
@JPN:　では、外で待ってる。
@ENG:

@IDX:19506
@OFF:0x18f0
@SPK:
@JPN:　一人になると、改めて部屋を見回した。
@ENG:

@IDX:19507
@OFF:0x1924
@SPK:
@JPN:　僅かに薬品臭の漂う、酷く殺風景な部屋。
@ENG:

@IDX:19508
@OFF:0x195a
@SPK:
@JPN:　ロッカーと長椅子以外、壁に張りついた洗面台と、　奥に通じる扉があるだけ。
@ENG:

@IDX:19509
@OFF:0x19b2
@SPK:
@JPN:　死体洗いの前に着替える場所と考えれば、これほど　雰囲気の合う場所はないのではないか？
@ENG:

@IDX:19510
@OFF:0x1a24
@SPK:
@JPN:　だがその分、どうしてもこれから見る死体のことを　考えてしまう。
@ENG:

@IDX:19511
@OFF:0x1a72
@SPK:
@JPN:　どんな死体なのか……。
@ENG:

@IDX:19512
@OFF:0x1a98
@SPK:
@JPN:　年齢は？　性別は？　なぜ献体に同意した？
@ENG:

@IDX:19513
@OFF:0x1ad0
@SPK:
@JPN:　そんな取り留めのないことが、頭の中でグルグルと　渦巻いている。
@ENG:

@IDX:19515
@OFF:0x1b67
@SPK:［鏑木］
@JPN:　おい、まだ時間はかかりそうか？
@ENG:

@IDX:19518
@OFF:0x1bbd
@SPK:[\protag]
@JPN:　すいません！　すぐに着替えます。
@ENG:

@IDX:19520
@OFF:0x1c22
@SPK:［鏑木］
@JPN:　早くしてくれよ？　俺も暇ってわけじゃないんだ。
@ENG:

@IDX:19521
@OFF:0x1c84
@SPK:
@JPN:　鏑木さんの声がドアのむこうから響いてくる。
@ENG:

@IDX:19522
@OFF:0x1cbe
@SPK:
@JPN:　これ以上感傷に浸っていると彼に迷惑をかける。
@ENG:

@IDX:19523
@OFF:0x1cfa
@SPK:
@JPN:　今はただ、何も考えずに動く時だ……。
@ENG:

@IDX:19524
@OFF:0x1d2e
@SPK:
@JPN:　おもむろにロッカーを引き開けると、ズボンに手を　かけた……。
@ENG:

@IDX:19526
@OFF:0x1ed4
@SPK:［鏑木］
@JPN:　やっと来たか。随分時間がかかったが、何をしていた？
@ENG:

@IDX:19529
@OFF:0x1f3e
@SPK:[\protag]
@JPN:　すみません。これから死体を見ると思うと、色々考えてしまって……。
@ENG:

@IDX:19531
@OFF:0x1fc3
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そんなことを考えていたのか？　いいか、この部屋にあるのは単なる死体じゃない。献体してくれた方のご遺体だ。
@ENG:

@IDX:19533
@OFF:0x2070
@SPK:［鏑木］
@JPN:　無論死体は死体だが、その辺の事情を考えれば感謝して洗うのが当然だと思わないか？
@ENG:

@IDX:19536
@OFF:0x20f6
@SPK:[\protag]
@JPN:　感謝……ですか？
@ENG:

@IDX:19538
@OFF:0x214b
@SPK:［鏑木］
@JPN:　我々が洗わなければ、献体してくれた人々の意志を無駄にすることになってしまう。そんなことはできないだろう？
@ENG:

@IDX:19539
@OFF:0x21e7
@SPK:
@JPN:　確かに彼の言う通りだ。
@ENG:

@IDX:19540
@OFF:0x220d
@SPK:
@JPN:　怖がってばかりいては、献体してくれた人に申し訳　が立たない。
@ENG:

@IDX:19541
@OFF:0x2259
@SPK:
@JPN:　尊い意思に感謝して、精一杯洗う……言われるまで　気がつかなかった自分が情けない。
@ENG:

@IDX:19543
@OFF:0x2302
@SPK:［鏑木］
@JPN:　納得したか？　いい加減、時間が押してるんだが……。
@ENG:

@IDX:19546
@OFF:0x236c
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。あの、ご迷惑をおかけしました。
@ENG:

@IDX:19548
@OFF:0x23d5
@SPK:［鏑木］
@JPN:　いや、誰でも最初はそんなものだ。気にしなくてもいい。
@ENG:

@IDX:19550
@OFF:0x244e
@SPK:［鏑木］
@JPN:　おっと、それからな、お前がこれからやる作業は、遺体の清掃作業の一部でしかないんだ。
@ENG:

@IDX:19553
@OFF:0x24d8
@SPK:[\protag]
@JPN:　一部……ですか？
@ENG:

@IDX:19555
@OFF:0x252d
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ。お前が洗ったあとに色々な処理をする連中がいるんだ。だから、お前の作業が遅れると、そいつらに迷惑をかけることになる。それを頭に入れておいてくれ。
@ENG:

@IDX:19558
@OFF:0x25f9
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。分かりました。
@ENG:

@IDX:19560
@OFF:0x26c8
@SPK:［鏑木］
@JPN:　よし。それじゃあ、始めるぞ。
@ENG:

@IDX:19563
@OFF:0x271c
@SPK:[\protag]
@JPN:　よろしくお願いします。
@ENG:

@IDX:19564
@OFF:0x2811
@SPK:
@JPN:　初めて入る仕事場……そこはひんやりとした冷気に　包まれ、シンと静まり返っている。
@ENG:

@IDX:19565
@OFF:0x2871
@SPK:
@JPN:　広さは８畳ほどだろうか、その半分弱のスペースが　掘り下げ式のプールになっている。
@ENG:

@IDX:19566
@OFF:0x28d1
@SPK:
@JPN:　大きめの風呂場……第一印象を何かにたとえるなら　それが一番近い。
@ENG:

@IDX:19567
@OFF:0x292f
@SPK:
@JPN:　他に目を引くものは、部屋の隅にある掃除道具。
@ENG:

@IDX:19568
@OFF:0x296b
@SPK:
@JPN:　何に使うのか分からない棒もあるが、あれでここを　掃除するのだろう。
@ENG:

@IDX:19569
@OFF:0x29bd
@SPK:
@JPN:　タワシやブラシが整然と並んで、こぢんまりとした　空間を作っている。
@ENG:

@IDX:19570
@OFF:0x2a0f
@SPK:
@JPN:　あとは、何も置いていない。
@ENG:

@IDX:19572
@OFF:0x2ae8
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ここがお前の仕事場だ。どうだ？　初めて入ってみて。
@ENG:

@IDX:19575
@OFF:0x2b52
@SPK:[\protag]
@JPN:　……随分狭いんですね。それに、寒いです……。
@ENG:

@IDX:19577
@OFF:0x2bc3
@SPK:［鏑木］
@JPN:　あんまり広かったら不便だろう？　それより……ホルマリンのにおいはどうだ？　つらくないか？
@ENG:

@IDX:19580
@OFF:0x2c53
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、それほどは……目にちょっと違和感がある以外、大したことはありません。
@ENG:

@IDX:19582
@OFF:0x2ce2
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そうか？　多分大丈夫だとは思うが、仕事中に気持ち悪くなったら更衣室で吐いてくれ。間違っても、ここでは吐くなよ。
@ENG:

@IDX:19585
@OFF:0x2d88
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。
@ENG:

@IDX:19586
@OFF:0x2dc0
@SPK:
@JPN:　鏑木さんは心配してくれたが、ホルマリンで気分が　悪くなることはなさそうに思える。
@ENG:

@IDX:19587
@OFF:0x2e20
@SPK:
@JPN:　嗅いでいて気持ちのいいものではないが、吐くまで　のものでもない。
@ENG:

@IDX:19588
@OFF:0x2e70
@SPK:
@JPN:　換気がしっかりされているおかげか、それともこの　マスクの性能がいいのか、とにかくこの程度ならば　充分我慢できるレベルだ。
@ENG:

@IDX:19590
@OFF:0x2f41
@SPK:［鏑木］
@JPN:　では、作業の説明に移ろうか。俺が実際に洗ってみせるから、よく見て覚えてくれ。
@ENG:

@IDX:19592
@OFF:0x2fd2
@SPK:［鏑木］
@JPN:　あとで質問の時間も設けるが、気づいたことや分からないことは、その場で質問するように……いいか？
@ENG:

@IDX:19595
@OFF:0x3068
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。よろしくお願いします。
@ENG:

@IDX:19597
@OFF:0x30c9
@SPK:［鏑木］
@JPN:　じゃあ、まず死体を引き上げる前に、床の水洗いだ。よっぽど汚れてる時以外は水で流すだけでいいから、忘れないこと。
@ENG:

@IDX:19598
@OFF:0x3179
@SPK:
@JPN:　そう説明しながら、鏑木さんは部屋の隅に置かれた　掃除用具へと近づいていく。
@ENG:

@IDX:19599
@OFF:0x31d3
@SPK:
@JPN:　床の水洗い……それだけでいいのなら、どんなにか　気が楽だろう。
@ENG:

@IDX:19601
@OFF:0x326a
@SPK:［鏑木］
@JPN:　おい、そっちにいると濡れるぞ。
@ENG:

@IDX:19604
@OFF:0x32c0
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい！
@ENG:

@IDX:19606
@OFF:0x330f
@SPK:［鏑木］
@JPN:　床の水洗いぐらいで説明することなんてないんだが……、一応ホルマリンを薄めないようにだけ、注意してくれ。
@ENG:

@IDX:19609
@OFF:0x33ad
@SPK:[\protag]
@JPN:　……水を入れるなってことですか？
@ENG:

@IDX:19611
@OFF:0x3412
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そうだ。じゃあ、見ててくれ。
@ENG:

@IDX:19612
@OFF:0x3462
@SPK:
@JPN:　……床の水洗いは、あっと言う間に終わった。
@ENG:

@IDX:19613
@OFF:0x349c
@SPK:
@JPN:　その場から一歩も動かずに、ただホースを操って水　で流しただけ。
@ENG:

@IDX:19614
@OFF:0x34ea
@SPK:
@JPN:　そんな大雑把な動きでも、ほとんどホルマリンの中　には入っていない。
@ENG:

@IDX:19616
@OFF:0x35eb
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ん？　どうした？　何か分からないことでもあったのか？
@ENG:

@IDX:19619
@OFF:0x3657
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいえ、ただ随分慣れてるんだなと思って……。
@ENG:

@IDX:19621
@OFF:0x36c8
@SPK:［鏑木］
@JPN:　俺のことか？　……まあな。だが、それがどうした？
@ENG:

@IDX:19624
@OFF:0x3730
@SPK:[\protag]
@JPN:　あなたのように慣れた人がいるのに、どうして僕にこの仕事をやらせるんですか？　今更素人に教えるよりも、あなたがやった方が早いと思うんですが。
@ENG:

@IDX:19626
@OFF:0x37ff
@SPK:［鏑木］
@JPN:　確かにそうだな。だがそうするとお前は職を失うことになる。それでいいなら、俺から副院長に言っておくが……どうする？
@ENG:

@IDX:19629
@OFF:0x38a7
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、いえ……そういう意味じゃないんです。すみません、今のは聞かなかったことにしてください。
@ENG:

@IDX:19631
@OFF:0x3946
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、分かっているさ。俺もちょっと脅かしてみただけだ。他になければ、続けてもいいか？
@ENG:

@IDX:19634
@OFF:0x39d2
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。
@ENG:

@IDX:19636
@OFF:0x3a1d
@SPK:［鏑木］
@JPN:　分かった。じゃあ次は、死体を引き上げる作業だ。先にむこうへ行ってくれ。
@ENG:

@IDX:19637
@OFF:0x3ae5
@SPK:
@JPN:　ここに、死体が沈んでいる。
@ENG:

@IDX:19638
@OFF:0x3b0f
@SPK:
@JPN:　光の加減でよく見えないが、それは間違いない。
@ENG:

@IDX:19639
@OFF:0x3b4b
@SPK:
@JPN:　生まれて初めて見る、見ず知らずの死体……それが　どんなものなのか、予想すらできていないまま目の　当たりにしなくてはならない。
@ENG:

@IDX:19640
@OFF:0x3bd7
@SPK:
@JPN:　もしも全ての皮膚がない、人体模型のような死体が　来たら……。
@ENG:

@IDX:19642
@OFF:0x3c6c
@SPK:［鏑木］
@JPN:　なんだ、震えてるじゃないか……怖いのか？
@ENG:

@IDX:19645
@OFF:0x3ccc
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。ここに沈んでる死体って、無茶苦茶に傷がついてたりはしませんよね？
@ENG:

@IDX:19647
@OFF:0x3d57
@SPK:［鏑木］
@JPN:　当たり前だ。多少の傷はあるかもしれんが、ここに来る死体はきれいなものばかりだ。
@ENG:

@IDX:19650
@OFF:0x3ddd
@SPK:[\protag]
@JPN:　なぜ、そう言い切れるんです？　万が一ってことも……。
@ENG:

@IDX:19652
@OFF:0x3e56
@SPK:［鏑木］
@JPN:　疑り深いやつだな……。いいか？　お前が心配するほどの傷がついたような死体は司法解剖行きだ。どうして、その傷がついたのか理由を調べなきゃならんからな。
@ENG:

@IDX:19655
@OFF:0x3f22
@SPK:[\protag]
@JPN:　……病院で死んでもですか？
@ENG:

@IDX:19657
@OFF:0x3f81
@SPK:［鏑木］
@JPN:　もちろんだ。例えば、腹を刺された人が運ばれてきたとする。そいつが病院で死んだら、それは殺人事件だろう？
@ENG:

@IDX:19660
@OFF:0x401f
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうなりますね。
@ENG:

@IDX:19662
@OFF:0x4074
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そうなれば警察の出番だ。ここには送られてこない。そいつが献体することに同意していたとしても、警察に持って行かれる。
@ENG:

@IDX:19665
@OFF:0x411e
@SPK:[\protag]
@JPN:　じゃあ、ここに来るのはどんな人なんですか？
@ENG:

@IDX:19667
@OFF:0x418d
@SPK:［鏑木］
@JPN:　主に病死……広い分類で言えば、自然死全般だ。
@ENG:

@IDX:19670
@OFF:0x41f1
@SPK:[\protag]
@JPN:　自然死……。
@ENG:

@IDX:19672
@OFF:0x4242
@SPK:［鏑木］
@JPN:　納得したか？　そろそろ作業に戻りたいんだが。
@ENG:

@IDX:19675
@OFF:0x42a6
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、お願いします。
@ENG:

@IDX:19676
@OFF:0x42ea
@SPK:
@JPN:　面倒臭そうに説明を終えると、手にした棒状のもの　をホルマリンの中へと無造作に突き入れた。
@ENG:

@IDX:19677
@OFF:0x4352
@SPK:
@JPN:　その後、辺りを探るように２～３度上下に動かし、　入れた時と同様無造作に引き抜く。
@ENG:

@IDX:19678
@OFF:0x43b2
@SPK:
@JPN:　それまで静かだった液面に波が生まれ、沈んでいる　死体の影を歪ませる。
@ENG:

@IDX:19680
@OFF:0x444f
@SPK:［鏑木］
@JPN:　浮かばせるのは簡単だ。棒で突けば浮かんでくる。
@ENG:

@IDX:19683
@OFF:0x44b5
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　引っ張るんじゃないんですか？
@ENG:

@IDX:19685
@OFF:0x451c
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ。引っ張ってるようには見えなかったろ？　詳しい説明は省くが、死体は突けば浮かんでくる。簡単だろ？
@ENG:

@IDX:19688
@OFF:0x45b8
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ、まあ……。
@ENG:

@IDX:19689
@OFF:0x45fa
@SPK:
@JPN:　なぜ突くと浮いてくるのか、理解できない。
@ENG:

@IDX:19690
@OFF:0x4632
@SPK:
@JPN:　浮かばせるのなら、普通に考えれば棒を引っかけて　持ち上げるはずだ……突いたら、逆に沈んでしまう　のではないか？
@ENG:

@IDX:19691
@OFF:0x46b0
@SPK:
@JPN:　だが本当にそれだけで、波に歪められた死体の影が　徐々に鮮明になってくる。
@ENG:

@IDX:19692
@OFF:0x485c
@SPK:
@JPN:　まず水面に浮き出てきたのは手の甲だった。
@ENG:

@IDX:19693
@OFF:0x4894
@SPK:
@JPN:　浮力を受けて力の抜けた腕から浮かび上がってきた　のだろう。
@ENG:

@IDX:19694
@OFF:0x48de
@SPK:
@JPN:　次いで顎、乳房など身体の表面から突き出た部分が　浮かんでくる。
@ENG:

@IDX:19695
@OFF:0x492c
@SPK:
@JPN:　他の部分は液面近くで、チャプチャプと波に洗われ　ている。
@ENG:

@IDX:19696
@OFF:0x4974
@SPK:
@JPN:　身体の力を完全に抜いて水に浮かんだら、ちょうど　こんな感じなのではないだろうか。
@ENG:

@IDX:19697
@OFF:0x49d4
@SPK:
@JPN:　浮かび上がった部分を中心に波紋が生じ、遠くなる　に従い弱々しく消えていく。
@ENG:

@IDX:19698
@OFF:0x4a3c
@SPK:
@JPN:　それはあまりにも普通だった。
@ENG:

@IDX:19699
@OFF:0x4a68
@SPK:
@JPN:　頭の中で散々思い浮かべていた死体というもの。
@ENG:

@IDX:19700
@OFF:0x4aa4
@SPK:
@JPN:　それとは全くかけ離れていた。
@ENG:

@IDX:19701
@OFF:0x4ad0
@SPK:
@JPN:　いま僕の目の前に現れたもの。
@ENG:

@IDX:19702
@OFF:0x4afc
@SPK:
@JPN:　それは、死体というよりも、ただ血色が悪いだけの　普通の女性に見えた。
@ENG:

@IDX:19704
@OFF:0x4b99
@SPK:［鏑木］
@JPN:　女か……ツイてるな……。
@ENG:

@IDX:19707
@OFF:0x4be9
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？
@ENG:

@IDX:19708
@OFF:0x4c21
@SPK:
@JPN:　ただぼんやりと、目の前に浮かび上がってきた女性　を眺めていた僕の耳に、鏑木さんの呟くような声が　届いてきた。
@ENG:

@IDX:19709
@OFF:0x4c9d
@SPK:
@JPN:　『ツイてる』
@ENG:

@IDX:19710
@OFF:0x4cb9
@SPK:
@JPN:　どういうことなのだろうか？
@ENG:

@IDX:19713
@OFF:0x4d1f
@SPK:[\protag]
@JPN:　『ツイてる』ってどういうことですか？
@ENG:

@IDX:19715
@OFF:0x4d88
@SPK:［鏑木］
@JPN:　なんだ、聞こえていたのか？　つまりな、死体には服なんぞ着せんから……どうせ洗うなら女の方がいい。そういうことだ。
@ENG:

@IDX:19718
@OFF:0x4e30
@SPK:[\protag]
@JPN:　はあ……そういうものなんですか。
@ENG:

@IDX:19720
@OFF:0x4e95
@SPK:［鏑木］
@JPN:　おいおい、そんなの当たり前だろ？　男の裸よりも女の裸……お前だって男なら分かるだろ？　まあいい。とにかく、さっさと岸につけちまうぞ。
@ENG:

@IDX:19721
@OFF:0x4fd7
@SPK:
@JPN:　男とか女とか、そんな問題ではない気がする。
@ENG:

@IDX:19722
@OFF:0x5011
@SPK:
@JPN:　僕たちが相手にしているのは死体なのだ。
@ENG:

@IDX:19723
@OFF:0x5047
@SPK:
@JPN:　その死体に対して、女の裸だからツイてるとか、男　だからツイてないとか……そんな風に考えられる彼　の感覚が、どうしても理解できない。
@ENG:

@IDX:19724
@OFF:0x50e7
@SPK:
@JPN:　だが、目の前に浮かぶ女性を見ると、確かにそんな　気もしてくる。
@ENG:

@IDX:19725
@OFF:0x5135
@SPK:
@JPN:　ユラユラとホルマリンに浮かぶ全裸の女性。
@ENG:

@IDX:19726
@OFF:0x516d
@SPK:
@JPN:　どうせ洗うなら女の方がいい……そうなのかもしれ　ない。
@ENG:

@IDX:19727
@OFF:0x51b3
@SPK:
@JPN:　仮にこれが、男性だったら……。
@ENG:

@IDX:19728
@OFF:0x51ef
@SPK:
@JPN:　そうして僕が悩んでる間も、作業は進んでいく。
@ENG:

@IDX:19729
@OFF:0x522b
@SPK:
@JPN:　無造作にしか見えない鏑木さんの動き。
@ENG:

@IDX:19730
@OFF:0x525f
@SPK:
@JPN:　呆気なく足下まで移動してきた女性の死体。
@ENG:

@IDX:19731
@OFF:0x5297
@SPK:
@JPN:　そっと目を閉じ、まるで微睡んでいるだけのように　見える……だが両の乳房は呼吸していないことの証　として、微動だにしない。
@ENG:

@IDX:19732
@OFF:0x5331
@SPK:
@JPN:　その様子が、僕の中の虚ろな幻想を打ち砕く。
@ENG:

@IDX:19733
@OFF:0x536b
@SPK:
@JPN:　まるで生きているような彼女。
@ENG:

@IDX:19734
@OFF:0x5397
@SPK:
@JPN:　でも、やっぱりこれは……死体なんだ……。
@ENG:

@IDX:19736
@OFF:0x5418
@SPK:［鏑木］
@JPN:　今の、ちゃんと見ていたのか？　胸ばかり見てないで、作業の手順も覚えてくれよ。
@ENG:

@IDX:19739
@OFF:0x549c
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、ちゃ、ちゃんと見てました。随分簡単なんですね？
@ENG:

@IDX:19741
@OFF:0x5513
@SPK:［鏑木］
@JPN:　簡単だと？　おいおい、一番難しい作業なんだぞ？　もし簡単に見えたんだとしたら、それは俺が慣れてるからだ。初めは慎重にやった方がいいぞ。
@ENG:

@IDX:19744
@OFF:0x55d1
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうなんですか……？
@ENG:

@IDX:19746
@OFF:0x562a
@SPK:［鏑木］
@JPN:　まあ、自分でやればそのうち分かる……で、やり方だが、棒を引っかけるのは脇の下が一番いい。最初は多少狙いづらくとも脇を狙うことだ。
@ENG:

@IDX:19749
@OFF:0x56e2
@SPK:[\protag]
@JPN:　脇の下を狙う……。
@ENG:

@IDX:19751
@OFF:0x5739
@SPK:［鏑木］
@JPN:　それから、死体が動き出すまでは結構重い。と言って力を入れすぎると、棒が外れてしまう。力の加減は、自分でやって覚えてくれ。うまく説明できん。
@ENG:

@IDX:19753
@OFF:0x5808
@SPK:［鏑木］
@JPN:　あとは、肩の力でも抜いてリラックスすることだな。それだけで大体うまくいくはずだ。
@ENG:

@IDX:19754
@OFF:0x588c
@SPK:
@JPN:　鏑木さんの言葉で、女性の死体に集中していた意識　が拡散して、我に返る。
@ENG:

@IDX:19755
@OFF:0x58e2
@SPK:
@JPN:　無駄なことを考えている暇はない。
@ENG:

@IDX:19756
@OFF:0x5912
@SPK:
@JPN:　今は、作業の手順をしっかり覚えないと。
@ENG:

@IDX:19757
@OFF:0x5956
@SPK:
@JPN:　脇の下を狙って、力を入れすぎない。
@ENG:

@IDX:19758
@OFF:0x5988
@SPK:
@JPN:　言われた内容をおさらいしながら、一人で作業する　自分を想像してみる。
@ENG:

@IDX:19759
@OFF:0x59dc
@SPK:
@JPN:　たった一人でこの部屋に来て、黙々と死体を手前に　引き寄せる……他の二つはともかくリラックスなど　できるかどうかは自信がない。
@ENG:

@IDX:19761
@OFF:0x5ab1
@SPK:［鏑木］
@JPN:　さてと、そろそろ床に上げるか……悪いが、この棒を頼む。
@ENG:

@IDX:19764
@OFF:0x5b1f
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　これで動かすんじゃないんですか？
@ENG:

@IDX:19766
@OFF:0x5b8a
@SPK:［鏑木］
@JPN:　馬鹿なことを言うな。そんなもので引っ張っても動くわけないだろ？　抱えて動かすんだよ。
@ENG:

@IDX:19769
@OFF:0x5c16
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………は？　今、なんて……。
@ENG:

@IDX:19771
@OFF:0x5c79
@SPK:［鏑木］
@JPN:　聞こえなかったのか？　両腕でこう抱えて……まあいい、実際にやって見せてやる。
@ENG:

@IDX:19772
@OFF:0x5d47
@SPK:
@JPN:　鏑木さんは僕に棒を手渡すと、おもむろに死体の側　に屈み込む。
@ENG:

@IDX:19773
@OFF:0x5d93
@SPK:
@JPN:　まだホルマリンに浸かっている脇の下に手を入れ、　死体を後ろから抱きかかえるようにする。
@ENG:

@IDX:19774
@OFF:0x5df9
@SPK:
@JPN:　そのまま引き抜くようにして、ホルマリンから死体　を引き上げた。
@ENG:

@IDX:19775
@OFF:0x5f22
@SPK:
@JPN:　……これが死体……。
@ENG:

@IDX:19776
@OFF:0x5f46
@SPK:
@JPN:　プールから引き上げられたそれは、先程までとは、　また別の存在感を持っていた。
@ENG:

@IDX:19777
@OFF:0x5fa2
@SPK:
@JPN:　ダラリと垂れ下がった腕。
@ENG:

@IDX:19778
@OFF:0x5fca
@SPK:
@JPN:　鏑木さんの動きに合わせて揺れる胸。
@ENG:

@IDX:19779
@OFF:0x5ffc
@SPK:
@JPN:　濡れて張りついた長い髪。
@ENG:

@IDX:19780
@OFF:0x6024
@SPK:
@JPN:　黒い繊毛に覆われた秘所……。
@ENG:

@IDX:19781
@OFF:0x6060
@SPK:
@JPN:　鏑木さんの動きにはまったく無駄がなかった。
@ENG:

@IDX:19782
@OFF:0x609a
@SPK:
@JPN:　何の躊躇もなく死体を抱え込み、そして引き上げて　しまった。
@ENG:

@IDX:19783
@OFF:0x60e4
@SPK:
@JPN:　僕にできるのか？　彼と同じように……。
@ENG:

@IDX:19786
@OFF:0x6204
@SPK:[\protag]
@JPN:　うわっ！？
@ENG:

@IDX:19788
@OFF:0x6253
@SPK:［鏑木］
@JPN:　どうした！？　何かあったのか？
@ENG:

@IDX:19791
@OFF:0x62a9
@SPK:[\protag]
@JPN:　い、今、死体が何かを吐いて……。
@ENG:

@IDX:19793
@OFF:0x630e
@SPK:［鏑木］
@JPN:　死体が何かを吐いた？　……ああ、そうか。安心しろ、ただのホルマリンだ。
@ENG:

@IDX:19796
@OFF:0x638c
@SPK:[\protag]
@JPN:　で、でも、いきなり吐き出して……。
@ENG:

@IDX:19798
@OFF:0x63f3
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そんな驚くことじゃないだろう？　溺れたヤツに水を吐かせるのと原理は一緒だ。なんなら詳しく説明しようか？
@ENG:

@IDX:19801
@OFF:0x6491
@SPK:[\protag]
@JPN:　い、いいえ、結構です……。じゃあ、死体が自分で吐いたわけでは……。
@ENG:

@IDX:19803
@OFF:0x6518
@SPK:［鏑木］
@JPN:　オイオイ、死体だぞ？　生きてもいないのに自分で吐くわけがないだろう？　しっかりしてくれよ。
@ENG:

@IDX:19804
@OFF:0x65a6
@SPK:
@JPN:　鏑木さんは簡単に言うが、僕にとっては充分衝撃的　な出来事だったのだ。
@ENG:

@IDX:19805
@OFF:0x65fa
@SPK:
@JPN:　僕には見えたのだ。
@ENG:

@IDX:19806
@OFF:0x661c
@SPK:
@JPN:　死体が……彼女が自分で液体を吐き出したように。　
@ENG:

@IDX:19807
@OFF:0x666c
@SPK:
@JPN:　僕の中に芽生えた儚い認識は、その出来事によって　脆くも崩れ去ってしまった。
@ENG:

@IDX:19808
@OFF:0x66c6
@SPK:
@JPN:　彼女が死体だと思い切ることができない。
@ENG:

@IDX:19809
@OFF:0x66fc
@SPK:
@JPN:　どうしても、普通の女性がただ目を瞑っているだけ　のように見えてしまう。
@ENG:

@IDX:19810
@OFF:0x6823
@SPK:
@JPN:　死体の口元を見つめている僕を呆れたように見て、　鏑木さんは軽く舌打ちをした。
@ENG:

@IDX:19811
@OFF:0x687f
@SPK:
@JPN:　憮然とした表情を浮かべたまま、部屋の中央に死体　を引きずっていく。
@ENG:

@IDX:19812
@OFF:0x68d1
@SPK:
@JPN:　鏑木さんのその様子からは、死体に対する怖れなど　微塵も感じられない。
@ENG:

@IDX:19813
@OFF:0x6925
@SPK:
@JPN:　腕の中の女性がどうしても生きているように見えて　しまう。
@ENG:

@IDX:19815
@OFF:0x6a07
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ここでいいか……そんなところにいないで、こっちへ来い！
@ENG:

@IDX:19818
@OFF:0x6a75
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい！
@ENG:

@IDX:19819
@OFF:0x6b19
@SPK:
@JPN:　鏑木さんに言われて、彼女の側に近づく。
@ENG:

@IDX:19820
@OFF:0x6b4f
@SPK:
@JPN:　静かに身体を横たえて眠っている女性。
@ENG:

@IDX:19821
@OFF:0x6b83
@SPK:
@JPN:　いや……眠っているのではない。
@ENG:

@IDX:19822
@OFF:0x6bb1
@SPK:
@JPN:　確かに、彼女は死んでいる。
@ENG:

@IDX:19823
@OFF:0x6bdb
@SPK:
@JPN:　間近にして、これが死体であるということを、五感　以外の感覚によって思い知らされる。
@ENG:

@IDX:19824
@OFF:0x6c4b
@SPK:
@JPN:　見た目は美しい女性でありながら、どこか生者とは　違う、明らかに異質な感じがする。
@ENG:

@IDX:19825
@OFF:0x6cab
@SPK:
@JPN:　死の香りを振り撒くモノ……。
@ENG:

@IDX:19826
@OFF:0x6cd7
@SPK:
@JPN:　周囲に漂わせている空気、オーラとでも言おうか、　はっきりとは言えない奇妙な雰囲気が、容易く死を　イメージさせる。
@ENG:

@IDX:19827
@OFF:0x6d63
@SPK:
@JPN:　それは、僕が彼女を死者として認識しているからで　あろうか……。
@ENG:

@IDX:19828
@OFF:0x6db1
@SPK:
@JPN:　或いは単に怯えているだけなのか……。
@ENG:

@IDX:19829
@OFF:0x6de5
@SPK:
@JPN:　冷たくなった肌の上を、うっすらと影のようなもの　が覆っているように見える。
@ENG:

@IDX:19830
@OFF:0x6e3f
@SPK:
@JPN:　冷たく黒い死のオーラ。
@ENG:

@IDX:19831
@OFF:0x6e65
@SPK:
@JPN:　それに触れただけで、僕まで『死』に取り込まれて　しまうような気さえする。
@ENG:

@IDX:19832
@OFF:0x6ecb
@SPK:
@JPN:　だが、自分でも矛盾していると思うが、怖いという　感じはしない。
@ENG:

@IDX:19833
@OFF:0x6f19
@SPK:
@JPN:　得体の知れないものに対する怯え……相容れぬもの　に対する嫌悪……。
@ENG:

@IDX:19834
@OFF:0x6f6b
@SPK:
@JPN:　部屋を満たす冷たい空気を通して絡みついてくる、　現実としての死……それが、僕の見た『死体』だ。　
@ENG:

@IDX:19836
@OFF:0x7024
@SPK:［鏑木］
@JPN:　やはり女の方がいい。小柄で軽いから、運ぶのが楽だ。
@ENG:

@IDX:19839
@OFF:0x708e
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:19841
@OFF:0x70dd
@SPK:［鏑木］
@JPN:　お前は本当にツイてるな。俺の時なんぞ、しわくちゃの婆さんだったぞ。初めて見る死体がこんな美人だと、先が楽しみになるだろう？
@ENG:

@IDX:19844
@OFF:0x718f
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいえ、そんなことは……。
@ENG:

@IDX:19846
@OFF:0x71ee
@SPK:［鏑木］
@JPN:　見てみろよ、この胸。８８はあるぞ……こんな女が死ぬなんて勿体ないと思わないか？
@ENG:

@IDX:19847
@OFF:0x726e
@SPK:
@JPN:　部屋に入る前に言った言葉など忘れたかのように、　不謹慎な評価を下している……。
@ENG:

@IDX:19848
@OFF:0x72cc
@SPK:
@JPN:　女性の方が小柄で軽いから、運ぶのが楽だ……その　言葉には頷ける。
@ENG:

@IDX:19849
@OFF:0x731c
@SPK:
@JPN:　この女性が一瞬目を奪われてしまうほどの豊乳で、　おまけにスタイルがいいことも認める。
@ENG:

@IDX:19850
@OFF:0x738e
@SPK:
@JPN:　自慢できることではないが、僕はこの年まで女性の　裸を生で見たことがない。
@ENG:

@IDX:19851
@OFF:0x73e6
@SPK:
@JPN:　当然セックスなど、本かビデオの中の出来事。
@ENG:

@IDX:19852
@OFF:0x7420
@SPK:
@JPN:　女性とつき合ったことはあるが、今までずっとキス　止まりだった。
@ENG:

@IDX:19853
@OFF:0x746e
@SPK:
@JPN:　正直、初めて生で見る女性の裸体としては、申し分　ないほどに美しい。
@ENG:

@IDX:19854
@OFF:0x74d0
@SPK:
@JPN:　だが、だからと言ってツイているとは思えない。
@ENG:

@IDX:19855
@OFF:0x750c
@SPK:
@JPN:　くすんだ肌の色、微動だにしない身体。
@ENG:

@IDX:19856
@OFF:0x7540
@SPK:
@JPN:　それらが新しく打ち立てられた認識をさらに堅牢に　していく。
@ENG:

@IDX:19857
@OFF:0x758a
@SPK:
@JPN:　いくら美しくとも、彼女は死体なのだ。
@ENG:

@IDX:19858
@OFF:0x75ce
@SPK:
@JPN:　生まれて初めて見る、生の女性の裸が死体。
@ENG:

@IDX:19859
@OFF:0x7606
@SPK:
@JPN:　僕の呼びかけに答えるわけでもないし、僕の愛撫に　反応するわけでもない。
@ENG:

@IDX:19860
@OFF:0x765c
@SPK:
@JPN:　好きでもない相手の裸を見るよりも、よっぽど性質　が悪いと言えるだろう。
@ENG:

@IDX:19861
@OFF:0x76c2
@SPK:
@JPN:　この現実を前にして、どこをどう考えたらツイてる　などと言えるのだろうか？
@ENG:

@IDX:19862
@OFF:0x771a
@SPK:
@JPN:　まるで、僕のあまりの女性運のなさに、死神が同情　してくれたような出来事ではないか……。
@ENG:

@IDX:19864
@OFF:0x77c9
@SPK:［鏑木］
@JPN:　さて、鑑賞会はこれでおしまいだ。作業に移ろうか？
@ENG:

@IDX:19867
@OFF:0x7831
@SPK:[\protag]
@JPN:　……はい。
@ENG:

@IDX:19869
@OFF:0x7880
@SPK:［鏑木］
@JPN:　お前にやってもらうのは、ホルマリンを落とす作業だ。
@ENG:

@IDX:19872
@OFF:0x78ea
@SPK:[\protag]
@JPN:　ホルマリンを落とす作業……じゃあ、ホースで水をかけるだけで……。
@ENG:

@IDX:19874
@OFF:0x796f
@SPK:［鏑木］
@JPN:　おいおい、バカを言うな。ホルマリンはそんなに簡単に落ちるものじゃないぞ。
@ENG:

@IDX:19877
@OFF:0x79ef
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうなんですか？　それじゃあ、専用の道具があったりするんですか？
@ENG:

@IDX:19879
@OFF:0x7a74
@SPK:［鏑木］
@JPN:　専用の道具？　まあ、専用って言えば専用だな。
@ENG:

@IDX:19882
@OFF:0x7ad8
@SPK:[\protag]
@JPN:　はあ……で、落とすのはホルマリンだけですか？
@ENG:

@IDX:19884
@OFF:0x7b49
@SPK:［鏑木］
@JPN:　いや、もちろんゴミや汚れも落としてもらう。だが無理に探す必要はない。全身洗えば、おのずと全ての汚れが落ちるはずだ。
@ENG:

@IDX:19887
@OFF:0x7bf3
@SPK:[\protag]
@JPN:　あの……血糊なんかがついてたりしないですよね？
@ENG:

@IDX:19889
@OFF:0x7c66
@SPK:［鏑木］
@JPN:　まだ言うのか？　さっきも言ったように、ここに来るのは病死したものだ。血糊なんてつくと思うか？
@ENG:

@IDX:19892
@OFF:0x7cfa
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ……。
@ENG:

@IDX:19894
@OFF:0x7d49
@SPK:［鏑木］
@JPN:　だろ？　……悪いが、あそこの棚からデッキブラシとタワシを取ってくれ。ああ、それとホースも。
@ENG:

@IDX:19897
@OFF:0x7ddb
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい。でも、床はきれいですけど……。
@ENG:

@IDX:19899
@OFF:0x7e48
@SPK:［鏑木］
@JPN:　何言ってるんだ。こいつを洗うんだろ？
@ENG:

@IDX:19902
@OFF:0x7ea4
@SPK:[\protag]
@JPN:　えっ？　じゃあ、あれはこの部屋の掃除用具じゃなくて……。
@ENG:

@IDX:19904
@OFF:0x7f21
@SPK:［鏑木］
@JPN:　お前の仕事道具だ。そうだ、その棒はもう使わんから、ついでに戻してくれ。
@ENG:

@IDX:19905
@OFF:0x7f99
@SPK:
@JPN:　それまで胸を見ながらにやついていたとは思えない　口調で、平然と言い切った。
@ENG:

@IDX:19906
@OFF:0x7ff3
@SPK:
@JPN:　デッキブラシとタワシで洗う……それではまるで、　汚れ物と同じ扱いだ。
@ENG:

@IDX:19907
@OFF:0x8047
@SPK:
@JPN:　漠然と抱いていた敬意のようなものが、ガラガラと　崩れていくような気がする。
@ENG:

@IDX:19910
@OFF:0x80dd
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………どうぞ。
@ENG:

@IDX:19912
@OFF:0x8132
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、ありがとう……ん？　何かあるのか？
@ENG:

@IDX:19915
@OFF:0x8192
@SPK:[\protag]
@JPN:　本当にそれで洗うんですか？　デッキブラシとタワシで……。
@ENG:

@IDX:19917
@OFF:0x820f
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、そうだが……それがどうかしたか？
@ENG:

@IDX:19920
@OFF:0x826d
@SPK:[\protag]
@JPN:　いや、痛そうだなって……。
@ENG:

@IDX:19922
@OFF:0x82cc
@SPK:［鏑木］
@JPN:　痛そう？　プッ！！
@ENG:

@IDX:19923
@OFF:0x8312
@SPK:
@JPN:　鏑木さんがいきなり吹き出した。
@ENG:

@IDX:19924
@OFF:0x8340
@SPK:
@JPN:　そのまま、さも可笑しくて堪らないと言うように、　腹を抱えている。
@ENG:

@IDX:19925
@OFF:0x8390
@SPK:
@JPN:　何がそんなに可笑しい？　僕の言葉は、そんなに変　だったか？
@ENG:

@IDX:19927
@OFF:0x8423
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ククク……はぁ、あまり笑わせんでくれ。だが初めての仕事でそんな冗談が言えるとは……頼もしい限りだな。副院長の人選は正しかったようだ。
@ENG:

@IDX:19930
@OFF:0x84df
@SPK:[\protag]
@JPN:　僕は冗談なんか言ってません。
@ENG:

@IDX:19932
@OFF:0x8540
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ん？　なら、本気なのか？　本気で死体が痛がると思っているのか？
@ENG:

@IDX:19935
@OFF:0x85b6
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、僕はただ……。
@ENG:

@IDX:19937
@OFF:0x860f
@SPK:［鏑木］
@JPN:　勘弁してくれ……何度同じことを言わせれば気が済むんだ？　死体は死体、痛がったりなどせん。もちろん俺は、こんなもので擦られるのは嫌だがね。
@ENG:

@IDX:19939
@OFF:0x86dc
@SPK:［鏑木］
@JPN:　だが、それとこれとは話が別だ。言っとくが、死体に感情移入なんかしたって無駄だぞ？　そんなの、ただ作業をやりづらくするだけだ。
@ENG:

@IDX:19942
@OFF:0x8790
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも……。
@ENG:

@IDX:19944
@OFF:0x87df
@SPK:［鏑木］
@JPN:　『でも』じゃない。いいか、ここでは死体を人間だと思うな。物だと思え。その方がこの先、気が楽だぞ。
@ENG:

@IDX:19947
@OFF:0x8877
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも、さっきは『感謝して洗え』って……。
@ENG:

@IDX:19949
@OFF:0x88e4
@SPK:［鏑木］
@JPN:　だからそれは……ああ、もういい！　とにかく、これ以上作業の進行を止めないでくれ。
@ENG:

@IDX:19950
@OFF:0x8968
@SPK:
@JPN:　鏑木さんは不機嫌な顔をしたまま、ホースで死体に　水をかけていく。
@ENG:

@IDX:19951
@OFF:0x89b8
@SPK:
@JPN:　全身を満遍なく濡らすと、ホースをデッキブラシに　持ち替えて、死体の身体を擦り始めた。
@ENG:

@IDX:19952
@OFF:0x8ad0
@SPK:
@JPN:　胸の谷間、乳房、下腹部と順に擦っていく。
@ENG:

@IDX:19953
@OFF:0x8b08
@SPK:
@JPN:　ブラシの動きに従って大きく揺れる乳房が、そこに　加えられている力の強さを物語っている。
@ENG:

@IDX:19954
@OFF:0x8b7e
@SPK:
@JPN:　当然、死体が抗議の声を上げることはないし、顔色　を変えることもない。
@ENG:

@IDX:19955
@OFF:0x8bd2
@SPK:
@JPN:　人間の形をしたものをブラシで強く擦る。
@ENG:

@IDX:19956
@OFF:0x8c08
@SPK:
@JPN:　……そんな尋常とは言いがたい光景が、僕の眼前で　繰り広げられている。
@ENG:

@IDX:19957
@OFF:0x8c6c
@SPK:
@JPN:　……なぜ鏑木さんが死体を物だと言い切れたのか、　目の前の光景が雄弁に語ってくれる。
@ENG:

@IDX:19958
@OFF:0x8cce
@SPK:
@JPN:　こんな扱いを続ければ、感覚が麻痺してしまっても　不思議ではない。
@ENG:

@IDX:19959
@OFF:0x8d1e
@SPK:
@JPN:　いつかは僕も、そうなってしまうのだろうか？
@ENG:

@IDX:19961
@OFF:0x8e0d
@SPK:［鏑木］
@JPN:　どうだ？　今俺は普段より乱暴に洗った……痛がってるように見えたか？　抗議の声が聞こえたか？
@ENG:

@IDX:19964
@OFF:0x8e9f
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいえ、聞こえませんでした……。
@ENG:

@IDX:19966
@OFF:0x8f04
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そうだ、死体は痛がったりはしない。やれば分かるが、そんなことを考えていたらつらくなるだけだぞ。
@ENG:

@IDX:19969
@OFF:0x8f9a
@SPK:[\protag]
@JPN:　……はい。すみませんでした。
@ENG:

@IDX:19971
@OFF:0x8ffb
@SPK:［鏑木］
@JPN:　いや、いいんだ。続きをやってもいいか？
@ENG:

@IDX:19974
@OFF:0x9059
@SPK:[\protag]
@JPN:　お願いします。
@ENG:

@IDX:19976
@OFF:0x90ac
@SPK:［鏑木］
@JPN:　では、細かい部分をやろう。順番はどうでもいいんだが、俺は顔から洗うようにしている。
@ENG:

@IDX:19977
@OFF:0x9194
@SPK:
@JPN:　死体の顔……。
@ENG:

@IDX:19978
@OFF:0x91b2
@SPK:
@JPN:　安らかで、穏やかで、見ただけでは死んでるなんて　分からない。
@ENG:

@IDX:19979
@OFF:0x91fe
@SPK:
@JPN:　彼女が死体だと知らない人から見たら、ただ眠って　いるだけに見えるのではないだろうか。
@ENG:

@IDX:19980
@OFF:0x9272
@SPK:
@JPN:　だが、よくよく見れば不自然な点はある。
@ENG:

@IDX:19981
@OFF:0x92a8
@SPK:
@JPN:　人が寝ているだけなら動きそうな顔の部位、瞼や唇　それらの部位がピクリともしない。
@ENG:

@IDX:19982
@OFF:0x9308
@SPK:
@JPN:　……当たり前だ。彼女は死んでいるのだから。
@ENG:

@IDX:19983
@OFF:0x93e6
@SPK:
@JPN:　鏑木さんは死体の側にしゃがみ込むと、額に手を置　いた。
@ENG:

@IDX:19984
@OFF:0x942c
@SPK:
@JPN:　寝ている彼女の髪を、そっと掻き上げている図……　そう見えないこともない。
@ENG:

@IDX:19985
@OFF:0x9484
@SPK:
@JPN:　それほど鏑木さんの動作は滑らかで、違和感を感じ　させない。
@ENG:

@IDX:19986
@OFF:0x94de
@SPK:
@JPN:　だがそれは、見た目だけのことだ。
@ENG:

@IDX:19987
@OFF:0x950e
@SPK:
@JPN:　本質を知っている者にとっては、自然な動作が逆に　不自然に思える。
@ENG:

@IDX:19988
@OFF:0x955e
@SPK:
@JPN:　鏑木さんは死体を触るということに、抵抗を感じて　いないのだろうか？
@ENG:

@IDX:19990
@OFF:0x95f9
@SPK:［鏑木］
@JPN:　いいか？　細かい部分を洗う時はタワシを使う。慣れてきたらデッキブラシでもいいが、結構難しいぞ。
@ENG:

@IDX:19993
@OFF:0x968f
@SPK:[\protag]
@JPN:　タワシ……ですか？　傷ついたりしませんか？
@ENG:

@IDX:19995
@OFF:0x96fe
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そりゃあ、思いっきり擦れば傷つくかもしれんが普通にやる分には問題ないと思うぞ。
@ENG:

@IDX:19998
@OFF:0x9784
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうですか……あの、それから……その、頭に手は添えないとまずいんですか？
@ENG:

@IDX:20000
@OFF:0x9811
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ん？　ああ、これか……。別に添えなくても構わないが、首が動くから洗いにくいぞ？
@ENG:

@IDX:20003
@OFF:0x9897
@SPK:[\protag]
@JPN:　動くんですか？
@ENG:

@IDX:20005
@OFF:0x98ea
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ。見たいか？
@ENG:

@IDX:20008
@OFF:0x9932
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、それはちょっと……。
@ENG:

@IDX:20010
@OFF:0x9991
@SPK:［鏑木］
@JPN:　まあ、そう怖がるな。これも勉強だと思って……。
@ENG:

@IDX:20011
@OFF:0x99f1
@SPK:
@JPN:　鏑木さんは、こちらの反応を面白がるように死体の　頭を動かし始めた。
@ENG:

@IDX:20012
@OFF:0x9a43
@SPK:
@JPN:　右に左に、上に下に……鏑木さんの手が死体の頭部　の向きを変える。
@ENG:

@IDX:20013
@OFF:0x9a93
@SPK:
@JPN:　それが人為的な動きだと分かっていても、見ている　方には、いささかの救いにもならない。
@ENG:

@IDX:20015
@OFF:0x9b40
@SPK:［鏑木］
@JPN:　な？　動くだろ？
@ENG:

@IDX:20018
@OFF:0x9b88
@SPK:[\protag]
@JPN:　分かりました……分かりましたから、もうやめてください。
@ENG:

@IDX:20020
@OFF:0x9c03
@SPK:［鏑木］
@JPN:　分かったよ。俺も死体で遊ぶ趣味があるわけじゃないからな。それにしても、この程度で参るなんてだらしないぞ？
@ENG:

@IDX:20023
@OFF:0x9ca3
@SPK:[\protag]
@JPN:　すみません……。
@ENG:

@IDX:20025
@OFF:0x9cf8
@SPK:［鏑木］
@JPN:　まあ、初めてならこんなもんか……。作業の説明に戻るぞ。
@ENG:

@IDX:20027
@OFF:0x9df3
@SPK:［鏑木］
@JPN:　タワシは額から顎に向かって動かせ。逆だと瞼が開いてタワシの毛が目に入るからな。場合によっては、刺さってしまうこともある。注意してくれ。
@ENG:

@IDX:20028
@OFF:0x9eb7
@SPK:
@JPN:　言いながら、実際にタワシで擦ってみせる。
@ENG:

@IDX:20029
@OFF:0x9eef
@SPK:
@JPN:　タワシが通り過ぎるたびに僅かに動く唇が、もっと　優しくしてくれと訴えているように見える。
@ENG:

@IDX:20031
@OFF:0xa00c
@SPK:［鏑木］
@JPN:　顔はこのくらいでいいだろう……次は手だ。
@ENG:

@IDX:20034
@OFF:0xa06c
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　もう終わりですか……。
@ENG:

@IDX:20036
@OFF:0xa0cd
@SPK:［鏑木］
@JPN:　なんだ、不服なのか？　確かに綺麗な顔をしているが、どうせ死体なんだぞ。見たければ見ていてもいいが……。
@ENG:

@IDX:20039
@OFF:0xa16b
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、そうじゃないんです。さっき口からホルマリンを吐いてましたよね？
@ENG:

@IDX:20041
@OFF:0xa1f4
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、それがどうかしたか。
@ENG:

@IDX:20044
@OFF:0xa246
@SPK:[\protag]
@JPN:　あの、口の中とかは洗わなくていいんですか？
@ENG:

@IDX:20046
@OFF:0xa2b5
@SPK:［鏑木］
@JPN:　それはお前の担当じゃないから気にしなくていい。死体の内側は、それ専門の職員がいるからな。なんだったらそれもやるか？
@ENG:

@IDX:20049
@OFF:0xa35f
@SPK:[\protag]
@JPN:　け、結構です。
@ENG:

@IDX:20051
@OFF:0xa3b2
@SPK:［鏑木］
@JPN:　冗談だよ。第一、内部洗浄は難しすぎて素人には無理だ。お前は、表面のホルマリンを落とすことに専念してくれればいい。
@ENG:

@IDX:20054
@OFF:0xa45a
@SPK:[\protag]
@JPN:　……分かりました。
@ENG:

@IDX:20056
@OFF:0xa4b1
@SPK:［鏑木］
@JPN:　よし。次にいくぞ。
@ENG:

@IDX:20057
@OFF:0xa561
@SPK:
@JPN:　鏑木さんはすでに手の側に移動している。
@ENG:

@IDX:20058
@OFF:0xa597
@SPK:
@JPN:　互いの掌を重ねるように捧げ持ち、手首から指先に　向かって素早くタワシを動かす。
@ENG:

@IDX:20059
@OFF:0xa5f5
@SPK:
@JPN:　反対の手も同様に、手早く作業を終えてしまう。
@ENG:

@IDX:20060
@OFF:0xa637
@SPK:
@JPN:　その手際の良さに、質問を挟む余裕すらない。
@ENG:

@IDX:20062
@OFF:0xa6be
@SPK:［鏑木］
@JPN:　手はこれで終わりだ。指の間を洗うのを忘れるな。何か質問はあるか？
@ENG:

@IDX:20065
@OFF:0xa736
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいえ……持ち方はそれでいいんですよね？
@ENG:

@IDX:20067
@OFF:0xa7a3
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ。それ以外は質問はないな？　なら、次に移ろうか。
@ENG:

@IDX:20068
@OFF:0xa86d
@SPK:
@JPN:　僕に見本を見せるように持っていた手を下ろして、　さっさと死体の足下に移動する。
@ENG:

@IDX:20069
@OFF:0xa8cb
@SPK:
@JPN:　次は足か？
@ENG:

@IDX:20070
@OFF:0xa8e5
@SPK:
@JPN:　だがそこは、先程デッキブラシで擦っていた。
@ENG:

@IDX:20071
@OFF:0xa91f
@SPK:
@JPN:　なら、どこを……。
@ENG:

@IDX:20073
@OFF:0xa98a
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ほら、何をしているんだ。ぼんやりしないで、こっちに来い。いいものを見せてやるから。
@ENG:

@IDX:20076
@OFF:0xaa14
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいもの……ですか？　何ですか一体。
@ENG:

@IDX:20078
@OFF:0xaa7d
@SPK:［鏑木］
@JPN:　来れば分かる……いいから早く来い。
@ENG:

@IDX:20079
@OFF:0xaad3
@SPK:
@JPN:　何を見せるつもりだ？
@ENG:

@IDX:20080
@OFF:0xaaf7
@SPK:
@JPN:　彼の声音からは胸を眺めてにやついてた時と同じ、　いやらしい響きが感じられる。
@ENG:

@IDX:20081
@OFF:0xab53
@SPK:
@JPN:　或いは死体の首を動かしてみせた時と同じような、　ふざけた響きが……。
@ENG:

@IDX:20084
@OFF:0xabe3
@SPK:[\protag]
@JPN:　来ましたけど……何が面白いんですか？
@ENG:

@IDX:20086
@OFF:0xac4c
@SPK:［鏑木］
@JPN:　まあ、見て驚け。
@ENG:

@IDX:20089
@OFF:0xad2a
@SPK:[\protag]
@JPN:　うあっ！　な、ななな……！？
@ENG:

@IDX:20091
@OFF:0xad8b
@SPK:［鏑木］
@JPN:　どうした、そんなに驚いて……見たことないのか？
@ENG:

@IDX:20094
@OFF:0xadf9
@SPK:[\protag]
@JPN:　そ、それは、その……。
@ENG:

@IDX:20096
@OFF:0xae54
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ……ひょっとして、俺が悪戯でこんなことをしてるんだと思ってるだろ？
@ENG:

@IDX:20099
@OFF:0xaed2
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………違うんですか？
@ENG:

@IDX:20101
@OFF:0xaf2d
@SPK:［鏑木］
@JPN:　馬鹿にしてるのか？　いくら何でも、こんなことを悪戯でするわけないだろ？　洗うんだよ、アソコも。
@ENG:

@IDX:20102
@OFF:0xafbf
@SPK:
@JPN:　大開きになった股間を顎で指して、開かせた脚の間　に身体を割り込ませていく。
@ENG:

@IDX:20103
@OFF:0xb019
@SPK:
@JPN:　手にはタワシを持ったまま……ということは、あれ　で洗うのだろう。
@ENG:

@IDX:20104
@OFF:0xb069
@SPK:
@JPN:　あんなもので女性の最もデリケートな部分を……。　
@ENG:

@IDX:20106
@OFF:0xb0f2
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そこからじゃ、洗ってるところがよく見えないだろ？　もっとこっちに来い。
@ENG:

@IDX:20109
@OFF:0xb170
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　で、でも……。
@ENG:

@IDX:20111
@OFF:0xb1c9
@SPK:［鏑木］
@JPN:　何恥ずかしがってるんだ？　やり方を見ておかないと困るのはお前なんだぞ？
@ENG:

@IDX:20114
@OFF:0xb247
@SPK:[\protag]
@JPN:　わ、分かりました……。
@ENG:

@IDX:20115
@OFF:0xb293
@SPK:
@JPN:　彼の言葉に従って、死体に近づいていく。
@ENG:

@IDX:20116
@OFF:0xb2c9
@SPK:
@JPN:　今までは見たくとも叶わなかった部分が、隠すもの　もなく晒されている。
@ENG:

@IDX:20117
@OFF:0xb32b
@SPK:
@JPN:　初めて見る……これが女性の……。
@ENG:

@IDX:20118
@OFF:0xb35b
@SPK:
@JPN:　成熟した身体には似合わない淡い茂み、下腹部から　流れるように続く柔らかいライン……その終点には　緩やかに口を閉ざした割れ目がある。
@ENG:

@IDX:20119
@OFF:0xb3ed
@SPK:
@JPN:　夢にまで見た女性器。
@ENG:

@IDX:20120
@OFF:0xb411
@SPK:
@JPN:　今、生まれて初めて目の当たりにしている。
@ENG:

@IDX:20121
@OFF:0xb459
@SPK:
@JPN:　薄い繊毛の下に見える肉の割れ目。
@ENG:

@IDX:20122
@OFF:0xb489
@SPK:
@JPN:　成人女性の生殖器官……。
@ENG:

@IDX:20123
@OFF:0xb4b1
@SPK:
@JPN:　学生時代の友人に、無理やり見せられた裏本で目の　当たりにしたものと同じものが、いま僕の目の前に　晒されている。
@ENG:

@IDX:20124
@OFF:0xb53d
@SPK:
@JPN:　だが、裏本を見た時のような激しい興奮が僕の心に　湧き上がることはなかった。
@ENG:

@IDX:20125
@OFF:0xb597
@SPK:
@JPN:　なぜだろうか……。
@ENG:

@IDX:20126
@OFF:0xb5b9
@SPK:
@JPN:　おそらくそれは、目の前に横たわる女性が死体だと　分かっているから。
@ENG:

@IDX:20127
@OFF:0xb60b
@SPK:
@JPN:　セックスに直接結びつく対象だとは認識していない　から。
@ENG:

@IDX:20128
@OFF:0xb661
@SPK:
@JPN:　そう考えてから一つ疑問が浮かぶ。
@ENG:

@IDX:20129
@OFF:0xb691
@SPK:
@JPN:　なぜグラビアの女性には興奮して、目の前の彼女に　は興奮しないのだろうか？
@ENG:

@IDX:20130
@OFF:0xb6e9
@SPK:
@JPN:　確かに、彼女は死んでいて、グラビアに写っている　のは生きた女性……そういう違いはある。
@ENG:

@IDX:20131
@OFF:0xb75f
@SPK:
@JPN:　しかし、生きた女性とは言っても、グラビアは所詮　ただの紙、単なる平面でしかない……だが、彼女は　実際にそこに存在しているのだ。
@ENG:

@IDX:20132
@OFF:0xb7ed
@SPK:
@JPN:　グラビアの女性とセックスすることは余程の僥倖に　恵まれない限り不可能だが、彼女なら……。
@ENG:

@IDX:20133
@OFF:0xb865
@SPK:
@JPN:　そこまで考えた瞬間、全身に悪寒が走った。
@ENG:

@IDX:20134
@OFF:0xb89d
@SPK:
@JPN:　僕は一体何を考えているんだ？
@ENG:

@IDX:20135
@OFF:0xb8c9
@SPK:
@JPN:　彼女と関係する？
@ENG:

@IDX:20136
@OFF:0xb8e9
@SPK:
@JPN:　それはつまり死体と……。
@ENG:

@IDX:20137
@OFF:0xb921
@SPK:
@JPN:　おぞましい考えに、自分の魂までが穢されたような　気がする。
@ENG:

@IDX:20138
@OFF:0xb96b
@SPK:
@JPN:　馬鹿なことを考えるな。
@ENG:

@IDX:20139
@OFF:0xb991
@SPK:
@JPN:　そんなこと人として許されるはずもない。
@ENG:

@IDX:20140
@OFF:0xb9c7
@SPK:
@JPN:　彼女を性的対象として捕らえてはいけない。
@ENG:

@IDX:20141
@OFF:0xba0d
@SPK:
@JPN:　……そうだ。
@ENG:

@IDX:20142
@OFF:0xba29
@SPK:
@JPN:　僕は彼女を異性だとは思っていない。
@ENG:

@IDX:20143
@OFF:0xba5b
@SPK:
@JPN:　その証拠に、どれだけ彼女の股間を凝視しても僕の　股間はピクリともしないじゃないか。
@ENG:

@IDX:20144
@OFF:0xbabd
@SPK:
@JPN:　これは死体なんだ。
@ENG:

@IDX:20145
@OFF:0xbadf
@SPK:
@JPN:　ただの死体なんだ。
@ENG:

@IDX:20147
@OFF:0xbb4a
@SPK:［鏑木］
@JPN:　どうだ？　興奮する眺めだろう？
@ENG:

@IDX:20148
@OFF:0xbb9a
@SPK:
@JPN:　自らの考えに振り回され、軽い混乱状態に陥りつつ　あった僕の鼓膜が、鏑木さんのからかうような声で　震わせられた。
@ENG:

@IDX:20149
@OFF:0xbc18
@SPK:
@JPN:　何を言われたのか分からなかった。
@ENG:

@IDX:20150
@OFF:0xbc48
@SPK:
@JPN:　『興奮する眺め』？　何のことだ？
@ENG:

@IDX:20151
@OFF:0xbc78
@SPK:
@JPN:　困惑する僕とは関係なく、鏑木さんは言葉を続けて　いた。
@ENG:

@IDX:20153
@OFF:0xbd07
@SPK:［鏑木］
@JPN:　もっとも……見るだけにしておけよ？　ムラムラきたら、風俗にでも行けばいい。行ったことはあるか？
@ENG:

@IDX:20156
@OFF:0xbd9d
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいえ……。
@ENG:

@IDX:20158
@OFF:0xbdee
@SPK:［鏑木］
@JPN:　何ならいい店を紹介してやろうか？　ただし、深みにはまると稼ぎを全部吸い取られるがな。
@ENG:

@IDX:20161
@OFF:0xbe7a
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:20163
@OFF:0xbec9
@SPK:［鏑木］
@JPN:　まあ、普段は右手のお世話にでもなるといい。それともお前、左利きか？
@ENG:

@IDX:20164
@OFF:0xbf3d
@SPK:
@JPN:　そう言って鏑木さんは低い声で笑う。
@ENG:

@IDX:20165
@OFF:0xbf6f
@SPK:
@JPN:　僕には彼の精神が理解できない。
@ENG:

@IDX:20166
@OFF:0xbf9d
@SPK:
@JPN:　なぜ死体を目の前にそんな話ができるのか？
@ENG:

@IDX:20167
@OFF:0xbfd5
@SPK:
@JPN:　もしかすると、彼は彼女で興奮することができるの　かもしれない。
@ENG:

@IDX:20168
@OFF:0xc023
@SPK:
@JPN:　あとで、彼女のことを思い出しながら自分でしたり　するのかもしれない。
@ENG:

@IDX:20169
@OFF:0xc087
@SPK:
@JPN:　鏑木さんと僕の距離が一気に広がった気がする。
@ENG:

@IDX:20170
@OFF:0xc0c3
@SPK:
@JPN:　あれが余裕というものなのだろうか。
@ENG:

@IDX:20171
@OFF:0xc0f5
@SPK:
@JPN:　僕は、この仕事に慣れるということがどういうこと　なのか、思い知らされた気がした。
@ENG:

@IDX:20173
@OFF:0xc19e
@SPK:［鏑木］
@JPN:　もう充分だろう？　そろそろ作業に戻ろう。
@ENG:

@IDX:20176
@OFF:0xc1fe
@SPK:[\protag]
@JPN:　……お願いします。
@ENG:

@IDX:20177
@OFF:0xc2e8
@SPK:
@JPN:　女性器をタワシで擦る。
@ENG:

@IDX:20178
@OFF:0xc30e
@SPK:
@JPN:　それもあんな無造作に。
@ENG:

@IDX:20179
@OFF:0xc334
@SPK:
@JPN:　僕にはまだ分からないだけで、コツのようなものが　あるのかもしれないが、あれで傷つかないというの　が信じられない。
@ENG:

@IDX:20180
@OFF:0xc3c0
@SPK:
@JPN:　そして、僕の心を占め始めたのは、先程までと全く　別の感情。
@ENG:

@IDX:20181
@OFF:0xc40a
@SPK:
@JPN:　憐憫……可哀想だという強い思い。
@ENG:

@IDX:20182
@OFF:0xc43a
@SPK:
@JPN:　生前の彼女は、献体した自分がこんな風に洗われる　ことなど知らなかったのだろう。
@ENG:

@IDX:20183
@OFF:0xc498
@SPK:
@JPN:　だから献体に同意した。
@ENG:

@IDX:20184
@OFF:0xc4be
@SPK:
@JPN:　そう考えないと僕には彼女の生前の思いが理解でき　なかった。
@ENG:

@IDX:20185
@OFF:0xc516
@SPK:
@JPN:　だが、この扱いを知った上で献体してくれたのだと　したら、彼女は本当に強い自己犠牲の精神の持ち主　だったのかもしれない。
@ENG:

@IDX:20186
@OFF:0xc59c
@SPK:
@JPN:　だからこそ感謝の念を忘れずに、丁寧に洗わなけれ　ばならない。
@ENG:

@IDX:20187
@OFF:0xc5e8
@SPK:
@JPN:　作業を始める際の鏑木さんの言葉が思い出された。　
@ENG:

@IDX:20188
@OFF:0xc63a
@SPK:
@JPN:　あの言葉は、建前に過ぎないのかもしれない。
@ENG:

@IDX:20189
@OFF:0xc674
@SPK:
@JPN:　いや、逆にあれが鏑木さんの本音なのか……。
@ENG:

@IDX:20190
@OFF:0xc6ba
@SPK:
@JPN:　心の中で感謝しつつも、その心の安定を保つため、　作業は、あえて大胆に。
@ENG:

@IDX:20191
@OFF:0xc710
@SPK:
@JPN:　死体を前にして時折見せるふざけたような態度は、　彼なりのリラックス法なのだろう。
@ENG:

@IDX:20192
@OFF:0xc770
@SPK:
@JPN:　自らの精神を守るために張り巡らせた防壁。
@ENG:

@IDX:20193
@OFF:0xc7a8
@SPK:
@JPN:　死体に対して無頓着な彼の振る舞いが、ほんの少し　だけ理解できたような気がする。
@ENG:

@IDX:20194
@OFF:0xc806
@SPK:
@JPN:　……理解するのと、それを実行できるのとは、全く　別のことなのだろうが。
@ENG:

@IDX:20196
@OFF:0xc8a5
@SPK:［鏑木］
@JPN:　……ここまで煽っておいて何だがな、一つ忠告しておくことがある。
@ENG:

@IDX:20199
@OFF:0xc91b
@SPK:[\protag]
@JPN:　……何ですか？
@ENG:

@IDX:20201
@OFF:0xc96e
@SPK:［鏑木］
@JPN:　悪戯したら捕まるかもしれんぞ？
@ENG:

@IDX:20204
@OFF:0xc9c4
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうなんですか……。
@ENG:

@IDX:20206
@OFF:0xca1d
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ。死体損壊とかそんな罪なんじゃないか？　詳しいことは分からんが。
@ENG:

@IDX:20209
@OFF:0xca99
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも、大丈夫ですよ。
@ENG:

@IDX:20211
@OFF:0xcaf2
@SPK:［鏑木］
@JPN:　何がだ？
@ENG:

@IDX:20214
@OFF:0xcb32
@SPK:[\protag]
@JPN:　悪戯しようなんて、思ったりしませんから……。
@ENG:

@IDX:20216
@OFF:0xcba3
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そうか、ならいいんだ。まあ、普通の神経の持ち主なら、死体に悪戯しようなどとは思わないだろうしな。
@ENG:

@IDX:20217
@OFF:0xcc39
@SPK:
@JPN:　心に刺さった棘がチクリと痛むのを感じた。
@ENG:

@IDX:20218
@OFF:0xcc71
@SPK:
@JPN:　一瞬だが、僕は考えてしまった。
@ENG:

@IDX:20219
@OFF:0xcc9f
@SPK:
@JPN:　死体と……。
@ENG:

@IDX:20220
@OFF:0xcccb
@SPK:
@JPN:　再び頭によぎったその考えを必死でかき消す。
@ENG:

@IDX:20221
@OFF:0xcd05
@SPK:
@JPN:　僕はそれを願っているのではない。
@ENG:

@IDX:20222
@OFF:0xcd35
@SPK:
@JPN:　それを欲しているのではない。
@ENG:

@IDX:20223
@OFF:0xcd61
@SPK:
@JPN:　ただ考えてしまっただけだ。
@ENG:

@IDX:20224
@OFF:0xcd8b
@SPK:
@JPN:　そんなことしたいとも思っていない。
@ENG:

@IDX:20225
@OFF:0xcdcb
@SPK:
@JPN:　僕は普通の神経の持ち主だ。
@ENG:

@IDX:20226
@OFF:0xcdf5
@SPK:
@JPN:　僕は普通の神経の持ち主だ。
@ENG:

@IDX:20227
@OFF:0xce1f
@SPK:
@JPN:　懸命に自分に言い聞かせる。
@ENG:

@IDX:20228
@OFF:0xce49
@SPK:
@JPN:　死体に悪戯しようなどとは思っていない……。
@ENG:

@IDX:20229
@OFF:0xce83
@SPK:
@JPN:　そんなこと考えたくもない。
@ENG:

@IDX:20230
@OFF:0xcead
@SPK:
@JPN:　できることなら触れたくもない。
@ENG:

@IDX:20232
@OFF:0xcf96
@SPK:［鏑木］
@JPN:　こら、ぼやっとするなよ。ここはもう終わったから、こいつを裏返すぞ。
@ENG:

@IDX:20235
@OFF:0xd010
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい。
@ENG:

@IDX:20237
@OFF:0xd05f
@SPK:［鏑木］
@JPN:　いいな、さっき言ったことを忘れるなよ。
@ENG:

@IDX:20240
@OFF:0xd0bd
@SPK:[\protag]
@JPN:　……分かっています。
@ENG:

@IDX:20242
@OFF:0xd116
@SPK:［鏑木］
@JPN:　まあ見るだけなら、いくら見たって構わないぞ。興味はあるんだろう？
@ENG:

@IDX:20245
@OFF:0xd18e
@SPK:[\protag]
@JPN:　……もう、充分です。
@ENG:

@IDX:20247
@OFF:0xd1e7
@SPK:［鏑木］
@JPN:　なんだ。淡泊な奴だな……じゃあ、背中に移ろう。
@ENG:

@IDX:20248
@OFF:0xd2ab
@SPK:
@JPN:　裏返され、死体は簡単にうつ伏せになる。
@ENG:

@IDX:20249
@OFF:0xd2e1
@SPK:
@JPN:　真っ先に丸みを帯びた尻が目に飛び込んでくるが、　興奮したりはしない。
@ENG:

@IDX:20250
@OFF:0xd335
@SPK:
@JPN:　自分の反応に多少安心し、安心している自分に落胆　する。
@ENG:

@IDX:20251
@OFF:0xd38d
@SPK:
@JPN:　そんなことは当たり前なのだ。
@ENG:

@IDX:20252
@OFF:0xd3b9
@SPK:
@JPN:　死体なのだから……。
@ENG:

@IDX:20253
@OFF:0xd3dd
@SPK:
@JPN:　死体の尻になど、興奮しないのが普通なのだから。　
@ENG:

@IDX:20254
@OFF:0xd42f
@SPK:
@JPN:　落ち込みかけた意識を無理やり切り替える。
@ENG:

@IDX:20255
@OFF:0xd467
@SPK:
@JPN:　背中はどうやって洗うのか……それに全神経を集中　させる。
@ENG:

@IDX:20257
@OFF:0xd4f8
@SPK:［鏑木］
@JPN:　さて、背中なんだが……ここは、特に言うべきことはないな。ほとんどデッキブラシで洗えるし、多少なら力を入れすぎても傷ついたりはしない。安心して洗える場所だ。
@ENG:

@IDX:20260
@OFF:0xd5ca
@SPK:[\protag]
@JPN:　ほとんど……ってことはタワシを使う場所もあるんですか？
@ENG:

@IDX:20262
@OFF:0xd645
@SPK:［鏑木］
@JPN:　一応慣れるまでは、脇の下と耳の後ろ……。それから尻の間もタワシを使った方がいいだろう。この３箇所は汚れてる割に洗いにくいからな。
@ENG:

@IDX:20265
@OFF:0xd6fd
@SPK:[\protag]
@JPN:　脇の下、耳の後ろ、お尻の間……ですか。
@ENG:

@IDX:20267
@OFF:0xd768
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ。俺は慣れてるからデッキブラシでやってしまうが、お前はタワシを使うんだぞ。
@ENG:

@IDX:20268
@OFF:0xd878
@SPK:
@JPN:　そう言うと、慣れた手つきでデッキブラシを動かし　始める。
@ENG:

@IDX:20269
@OFF:0xd8c0
@SPK:
@JPN:　耳の後ろ、脇の下、尻の間……洗いにくいと言って　いた部分まで、器用にデッキブラシを操る。
@ENG:

@IDX:20270
@OFF:0xd928
@SPK:
@JPN:　その手際の良さは、とても死体を洗っているように　見えない。
@ENG:

@IDX:20271
@OFF:0xd972
@SPK:
@JPN:　もっと単純な形をしたもの……極端に言えば、丸太　か何かを洗っているように見える。
@ENG:

@IDX:20272
@OFF:0xd9d2
@SPK:
@JPN:　自分が洗ってるとしたら、とてもああは洗えない。　
@ENG:

@IDX:20274
@OFF:0xdb66
@SPK:［鏑木］
@JPN:　よし、これで終わりだ。あとは全体を水で流してから、そこのインターフォンで人を呼べばいい。簡単だろう？
@ENG:

@IDX:20277
@OFF:0xdc02
@SPK:[\protag]
@JPN:　……見ている分には。
@ENG:

@IDX:20279
@OFF:0xdc5b
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ハハハ、正直でいい。慣れるまでは色々と失敗するだろうが、すぐうまくなる。コツを掴んでしまえば、それほど難しい作業ではないからな。
@ENG:

@IDX:20280
@OFF:0xdd0d
@SPK:
@JPN:　本当にそうだろうか？
@ENG:

@IDX:20281
@OFF:0xdd31
@SPK:
@JPN:　見ている分には簡単……それは単に、他人事として　見ていたからじゃないか？
@ENG:

@IDX:20282
@OFF:0xdd89
@SPK:
@JPN:　明日からは、一人で作業を進める。
@ENG:

@IDX:20283
@OFF:0xddb9
@SPK:
@JPN:　僕は、鏑木さんと同じように、落ち着いて作業する　ことができるのだろうか？
@ENG:

@IDX:20284
@OFF:0xde1f
@SPK:
@JPN:　鏑木さんが洗うのを、ただ見学しているだけだった　今日でさえ途中何度も嫌になった。
@ENG:

@IDX:20285
@OFF:0xde7f
@SPK:
@JPN:　彼が側にいる今でさえ、僕は死体に目を向けただけ　で軽い恐慌状態に陥りそうになる。
@ENG:

@IDX:20286
@OFF:0xdedf
@SPK:
@JPN:　そんな僕が、死体を抱え上げることなど、果たして　できるのだろうか？
@ENG:

@IDX:20287
@OFF:0xdf3f
@SPK:
@JPN:　いくら考えても肯定的な答えは出ず、逆に否定的な　答えばかりが浮かんでくる。
@ENG:

@IDX:20288
@OFF:0xdf99
@SPK:
@JPN:　引き上げることなどできない。
@ENG:

@IDX:20289
@OFF:0xdfc5
@SPK:
@JPN:　抱えることなどできない。
@ENG:

@IDX:20290
@OFF:0xdfed
@SPK:
@JPN:　触ることなどできない。
@ENG:

@IDX:20291
@OFF:0xe013
@SPK:
@JPN:　だが、明日は一人でやらなければならないのだ。
@ENG:

@IDX:20293
@OFF:0xe098
@SPK:［鏑木］
@JPN:　で、最後に、洗い終わった遺体を俺が確認する。それでＯＫが出れば仕事は終わりだ。
@ENG:

@IDX:20296
@OFF:0xe11e
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………一つ、いいでしょうか？
@ENG:

@IDX:20298
@OFF:0xe1fb
@SPK:［鏑木］
@JPN:　どうした、改まって。
@ENG:

@IDX:20301
@OFF:0xe247
@SPK:[\protag]
@JPN:　あなたは僕にこの仕事ができると思いますか？
@ENG:

@IDX:20303
@OFF:0xe2b6
@SPK:［鏑木］
@JPN:　……正直、難しいと思う。はっきり言って、俺が初めてやった時より酷い顔をしている。今日は見てるだけだったのにな。
@ENG:

@IDX:20306
@OFF:0xe35c
@SPK:[\protag]
@JPN:　……明日からは一人なんですよね？
@ENG:

@IDX:20308
@OFF:0xe3c1
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、そうだ。
@ENG:

@IDX:20311
@OFF:0xe407
@SPK:[\protag]
@JPN:　鏑木さんが一緒にやってくれたりはできませんか？
@ENG:

@IDX:20313
@OFF:0xe47a
@SPK:［鏑木］
@JPN:　俺が一緒に？　それは無理だ。
@ENG:

@IDX:20316
@OFF:0xe4ce
@SPK:[\protag]
@JPN:　無理……なんですか？
@ENG:

@IDX:20318
@OFF:0xe527
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ。俺にもやらなきゃならん仕事があるしな。
@ENG:

@IDX:20321
@OFF:0xe58b
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:20323
@OFF:0xe5da
@SPK:［鏑木］
@JPN:　それに、これは副院長がお前のために用意した仕事なんだぞ？それを俺が手助けなんかしたりしたら、副院長が気を悪くするかもしれんだろ？　そんなの俺はゴメンだ。
@ENG:

@IDX:20326
@OFF:0xe6aa
@SPK:[\protag]
@JPN:　……そうですか……分かりました。
@ENG:

@IDX:20328
@OFF:0xe70f
@SPK:［鏑木］
@JPN:　まあ、やってやれない仕事じゃない。作業は簡単だし、あとは考え方次第だろうな。
@ENG:

@IDX:20329
@OFF:0xe78f
@SPK:
@JPN:　考え方次第……それはつまり、慣れてしまえという　ことだ。
@ENG:

@IDX:20330
@OFF:0xe7d7
@SPK:
@JPN:　慣れてしまえば死体に怯えずに済む。
@ENG:

@IDX:20331
@OFF:0xe809
@SPK:
@JPN:　彼のように簡単に仕事をこなせるようになる。
@ENG:

@IDX:20332
@OFF:0xe843
@SPK:
@JPN:　それには、数をこなしていくしかない。
@ENG:

@IDX:20334
@OFF:0xe930
@SPK:［鏑木］
@JPN:　さてと……俺は確認があるから、もう少し残っていく。質問がなければお前はもう行っていい。何かあるか？
@ENG:

@IDX:20337
@OFF:0xe9ca
@SPK:[\protag]
@JPN:　……いえ、特にありません。
@ENG:

@IDX:20339
@OFF:0xea29
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そうか？　まあ今は何もなくとも、そのうち何かあるだろう。仕事で分からないことがあったら気軽に聞いてくれ。
@ENG:

@IDX:20342
@OFF:0xeac9
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。その時は、よろしくお願いします……では、お先に失礼します。
@ENG:

@IDX:20344
@OFF:0xeb4e
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、明日から頑張れよ。
@ENG:

@IDX:20345
@OFF:0xec4b
@SPK:
@JPN:　部屋を出ると同時に、大きく呼吸を繰り返し、肺の　中に新鮮な空気を送り込んだ。
@ENG:

@IDX:20346
@OFF:0xeca7
@SPK:
@JPN:　異様な空間から解放された安堵感が、緊張していた　肉体と精神を、一気に弛緩させる。
@ENG:

@IDX:20347
@OFF:0xed07
@SPK:
@JPN:　全身からドッと汗が噴き出し、経験したことのない　疲労感が身体を襲ってくる。
@ENG:

@IDX:20348
@OFF:0xed61
@SPK:
@JPN:　しかし、この疲れは、僕が正常である証だろう。
@ENG:

@IDX:20349
@OFF:0xedad
@SPK:
@JPN:　あるはずもなく、だが確かに存在していた、死体の　発するあの異質な空気……。
@ENG:

@IDX:20350
@OFF:0xee07
@SPK:
@JPN:　具現化した死の、確かな存在感……。
@ENG:

@IDX:20351
@OFF:0xee39
@SPK:
@JPN:　身体を包んでいた、得体の知れない感覚……。
@ENG:

@IDX:20352
@OFF:0xee73
@SPK:
@JPN:　これで平然としていられる方がどうかしている。
@ENG:

@IDX:20353
@OFF:0xeebf
@SPK:
@JPN:　だが……明日からのことを考えると、このままでは　いけないと思えてくる。
@ENG:

@IDX:20354
@OFF:0xef15
@SPK:
@JPN:　死体を前にしても平然と作業できなくては、とても　続けてなどいられない。
@ENG:

@IDX:20355
@OFF:0xef6b
@SPK:
@JPN:　……そんなことが僕に果たして可能だろうか？
@ENG:

@IDX:20357
@OFF:0xeff0
@SPK:［女の声］
@JPN:　お疲れ様でした。
@ENG:

@IDX:20361
@OFF:0xf0c4
@SPK:[\protag]
@JPN:　ああ、御堂さんでしたか……そう言えば、仕事の前後にミーティングをやるんでしたね。
@ENG:

@IDX:20363
@OFF:0xf159
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そうです。こちらの報告書にサインをお願いします。
@ENG:

@IDX:20366
@OFF:0xf1c1
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい……これでいいですか？
@ENG:

@IDX:20368
@OFF:0xf224
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……はい、結構です。次回からは仕事中に気づいたことを記載していただくことになります。特に傷は、記載しないとあなたがつけたことになってしまいますので注意してください。
@ENG:

@IDX:20371
@OFF:0xf300
@SPK:[\protag]
@JPN:　分かりました。
@ENG:

@IDX:20372
@OFF:0xf342
@SPK:
@JPN:　昨日も感じたが、彼女の口調は素っ気ない。
@ENG:

@IDX:20373
@OFF:0xf37a
@SPK:
@JPN:　必要なことしか話さず、それも最小限に抑えようと　しているように思える。
@ENG:

@IDX:20374
@OFF:0xf3d0
@SPK:
@JPN:　仕事の後にこんな口調で話されたら、さらに疲れが　増してしまう。
@ENG:

@IDX:20376
@OFF:0xf467
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……？　何か質問がおありですか？
@ENG:

@IDX:20379
@OFF:0xf4bf
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、あの……担当って、どんなことをするんですか？
@ENG:

@IDX:20381
@OFF:0xf536
@SPK:［悠紀］
@JPN:　担当……ですか？　基本的には、あなたのお仕事がスムーズに進むようにお手伝いをさせていただきます。
@ENG:

@IDX:20384
@OFF:0xf5ce
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　それって、作業自体を補助してくれたりするんですか？
@ENG:

@IDX:20386
@OFF:0xf64b
@SPK:［悠紀］
@JPN:　いいえ、そういうことではありません。それに、その部屋の中に入ることは認められていませんので。
@ENG:

@IDX:20389
@OFF:0xf6df
@SPK:[\protag]
@JPN:　じゃあ……。
@ENG:

@IDX:20391
@OFF:0xf730
@SPK:［悠紀］
@JPN:　報告書作成のお手伝いと、その日の仕事内容の説明。つまり、仕事の前と後のミーティングが担当の主な仕事です。
@ENG:

@IDX:20394
@OFF:0xf7d0
@SPK:[\protag]
@JPN:　仕事の前と後のミーティング……でも、今日は仕事前にやってませんけど？
@ENG:

@IDX:20396
@OFF:0xf859
@SPK:［悠紀］
@JPN:　はい。本日は作業内容の見学だけなので必要ありませんでしたから。
@ENG:

@IDX:20398
@OFF:0xf8dc
@SPK:［悠紀］
@JPN:　それにミーティングと言っても、何体洗うのか、洗ってもらうのはどんなご遺体なのか、その程度のことを説明するだけです。
@ENG:

@IDX:20401
@OFF:0xf986
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうなんですか……。
@ENG:

@IDX:20402
@OFF:0xf9ce
@SPK:
@JPN:　やはり素っ気ない。
@ENG:

@IDX:20403
@OFF:0xf9f0
@SPK:
@JPN:　少し話せばもっとくだけてくれるのかと思ったが、　一向にそんな気配は見せない。
@ENG:

@IDX:20404
@OFF:0xfa4c
@SPK:
@JPN:　嫌われているのか、彼女の性格なのか……。
@ENG:

@IDX:20405
@OFF:0xfa84
@SPK:
@JPN:　いずれにせよ、これ以上話題がない。
@ENG:

@IDX:20407
@OFF:0xfaff
@SPK:［悠紀］
@JPN:　質問は以上ですか？　でしたら今日はこれで終わりにしたいのですが。
@ENG:

@IDX:20410
@OFF:0xfb77
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい。もう何もありません。
@ENG:

@IDX:20412
@OFF:0xfbda
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そうですか。ではまた明日、朝８時にこちらでお待ちしております。
@ENG:

@IDX:20413
@OFF:0xfc5a
@SPK:
@JPN:　御堂さんの姿が見えなくなると、我知らずため息が　漏れた。
@ENG:

@IDX:20414
@OFF:0xfca2
@SPK:
@JPN:　これからずっと、あんな話し方をされるのか？
@ENG:

@IDX:20415
@OFF:0xfcdc
@SPK:
@JPN:　いくら仕事のつき合いとは言え、もう少し友好的な　会話があってもいいのではないか？
@ENG:

@IDX:20417
@OFF:0xfdeb
@SPK:［千草］
@JPN:　お疲れ様。説明は終わったみたいね。
@ENG:

@IDX:20420
@OFF:0xfe45
@SPK:[\protag]
@JPN:　あれ？　副院長……何でこんなところに？
@ENG:

@IDX:20422
@OFF:0xfeb0
@SPK:［千草］
@JPN:　なんでって、あなたの初仕事が気になったからよ……で、どうだったの？　続けられそうかしら？
@ENG:

@IDX:20425
@OFF:0xff40
@SPK:[\protag]
@JPN:　……鏑木さんは、難しいと言ってました。
@ENG:

@IDX:20427
@OFF:0x10021
@SPK:［千草］
@JPN:　難しいって……続けられないってこと？　困ったわね。
@ENG:

@IDX:20430
@OFF:0x1008b
@SPK:[\protag]
@JPN:　申し訳ありません……。
@ENG:

@IDX:20432
@OFF:0x10160
@SPK:［千草］
@JPN:　あっ、違うの。そういう意味じゃないわ。鏑木ももう少し言い方を考えればいいのに……って思っただけだから。
@ENG:

@IDX:20435
@OFF:0x101fe
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも、僕自身そう思いましたから……。
@ENG:

@IDX:20437
@OFF:0x102dd
@SPK:［千草］
@JPN:　そんなにつらかったの？
@ENG:

@IDX:20440
@OFF:0x1032b
@SPK:[\protag]
@JPN:　……はい。
@ENG:

@IDX:20442
@OFF:0x1037a
@SPK:［千草］
@JPN:　そう……でもこれが我慢できないなら、医者なんて諦めた方がいいわよ？
@ENG:

@IDX:20445
@OFF:0x103f4
@SPK:[\protag]
@JPN:　解剖実習があるから……ですか？
@ENG:

@IDX:20447
@OFF:0x10457
@SPK:［千草］
@JPN:　まあ、そんなところね。洗うだけで嫌がってたら、解剖なんてできないでしょ？
@ENG:

@IDX:20450
@OFF:0x104d7
@SPK:[\protag]
@JPN:　それはそうですけど……。
@ENG:

@IDX:20452
@OFF:0x105aa
@SPK:［千草］
@JPN:　考えようによっては、いい機会じゃない？　今から死体に慣れておけば、解剖実習で困らないでしょう？
@ENG:

@IDX:20453
@OFF:0x1063c
@SPK:
@JPN:　副院長は、厚意で言ってくれたのだろう。
@ENG:

@IDX:20454
@OFF:0x10672
@SPK:
@JPN:　わざわざ様子を見に来てくれたことでも、心配して　くれてることはよく分かる。
@ENG:

@IDX:20455
@OFF:0x106cc
@SPK:
@JPN:　だが今の状態では、どうしても責められてるように　感じられてしまう。
@ENG:

@IDX:20457
@OFF:0x107d7
@SPK:［千草］
@JPN:　ごめんなさい。余計なこと言って、落ち込ませちゃったわね。
@ENG:

@IDX:20460
@OFF:0x10847
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、そんなことは……。
@ENG:

@IDX:20462
@OFF:0x108a4
@SPK:［千草］
@JPN:　とにかく、少しの間だから頑張ってみてくれない？　私も応援するから。
@ENG:

@IDX:20465
@OFF:0x1091e
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい……頑張ってみます。
@ENG:

@IDX:20467
@OFF:0x109f1
@SPK:［千草］
@JPN:　じゃあ私はもう行くわ……あなたも早く着替えて部屋に戻りなさい。
@ENG:

@IDX:20470
@OFF:0x10a67
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。
@ENG:

@IDX:20471
@OFF:0x10aaf
@SPK:
@JPN:　……今日はもう、部屋に戻って休もう。
@ENG:

@IDX:20472
@OFF:0x10ae3
@SPK:
@JPN:　望むと望まざるとに関わらず、明日は一人で仕事を　しなければいけない。
@ENG:

@IDX:20473
@OFF:0x10b37
@SPK:
@JPN:　こんな疲れが残っていたら仕事どころではない。
@ENG:

@IDX:20474
@OFF:0x10b73
@SPK:
@JPN:　さっさと着替えて、部屋に帰ろう……。
@ENG:

@IDX:20475
@OFF:0x10c72
@SPK:
@JPN:　ロビーは受診の順番を待つ外来の患者でいっぱいに　なっている。
@ENG:

@IDX:20476
@OFF:0x10cbe
@SPK:
@JPN:　まだ診察は始まっていないのに……。
@ENG:

@IDX:20478
@OFF:0x10d3b
@SPK:［女の声］
@JPN:　おや？　……ちょいと兄さん！
@ENG:

@IDX:20482
@OFF:0x10e23
@SPK:[\protag]
@JPN:　あなたは昨日の……鎌田さんでしたか？
@ENG:

@IDX:20484
@OFF:0x10e8e
@SPK:［志津江］
@JPN:　よしとくれよ……志津江でいいさね。
@ENG:

@IDX:20487
@OFF:0x10ee8
@SPK:[\protag]
@JPN:　は、はぁ……。で、今日はどうかされたんですか？　副院長にアポイントでしたら、受付で……。
@ENG:

@IDX:20489
@OFF:0x10f87
@SPK:［志津江］
@JPN:　毎日会ったってしょうがないだろう？　今は散歩の帰りさね。あんたを見かけたんでね、一言礼を言いたくてさ。
@ENG:

@IDX:20492
@OFF:0x11025
@SPK:[\protag]
@JPN:　そんな、お礼だなんて……僕は何もしてませんよ。
@ENG:

@IDX:20494
@OFF:0x1109a
@SPK:［志津江］
@JPN:　いいや、あんたのおかげさ……懐かしい話ができたよ。
@ENG:

@IDX:20497
@OFF:0x11104
@SPK:[\protag]
@JPN:　それは良かったですね。
@ENG:

@IDX:20499
@OFF:0x11161
@SPK:［志津江］
@JPN:　ああ……あの子も変わってなかったし、兄さんみたいな職員がいるなら入院も悪くないさね。院長も安心だろうよ。
@ENG:

@IDX:20502
@OFF:0x11201
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　院長ともお知り合いなんですか？
@ENG:

@IDX:20504
@OFF:0x1126c
@SPK:［志津江］
@JPN:　いんや。知り合いってほどじゃないよ。あの子とここの院長が出会ったのがあたしの店だったんだよ。
@ENG:

@IDX:20507
@OFF:0x1130b
@SPK:[\protag]
@JPN:　えっ、そうだったんですか。
@ENG:

@IDX:20510
@OFF:0x11362
@SPK:[\protag]
@JPN:　……？　どういう意味ですか？
@ENG:

@IDX:20512
@OFF:0x113c5
@SPK:［志津江］
@JPN:　おや、知らなかったのかい？　あの子ね、前にうちで働いてたことがあるのさ。その時の客に、院長がいたってわけだ。
@ENG:

@IDX:20515
@OFF:0x11469
@SPK:[\protag]
@JPN:　副院長がクラブで？　何でまた……。
@ENG:

@IDX:20517
@OFF:0x114d2
@SPK:［志津江］
@JPN:　医者になるためさね。両親が死んで、結構苦労したらしいよ？
@ENG:

@IDX:20520
@OFF:0x11542
@SPK:[\protag]
@JPN:　っ！？　……それって、僕と同じ……。
@ENG:

@IDX:20522
@OFF:0x11623
@SPK:［志津江］
@JPN:　あっと……あんまり人にしゃべるなって言われてたんだった。今のは内緒にしといておくれよ。
@ENG:

@IDX:20525
@OFF:0x116b1
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい、分かりました。
@ENG:

@IDX:20527
@OFF:0x11782
@SPK:［志津江］
@JPN:　ありがとうよ。じゃ……忙しいトコ、邪魔したね。
@ENG:

@IDX:20530
@OFF:0x117e8
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいえ……では、お大事に。
@ENG:

@IDX:20531
@OFF:0x1184f
@SPK:
@JPN:　随分気っ風のいいおばさんだ……。
@ENG:

@IDX:20532
@OFF:0x1187f
@SPK:
@JPN:　死体洗いで落ち込んでいた気分が、おかげで随分と　楽になった。
@ENG:

@IDX:20533
@OFF:0x118cb
@SPK:
@JPN:　感謝したいのは、こちらの方だ。
@ENG:

@IDX:20534
@OFF:0x1190a
@SPK:
@JPN:　随分気っ風のいいおばさんだ……。
@ENG:

@IDX:20535
@OFF:0x1193a
@SPK:
@JPN:　死体洗いで落ち込んでいた気分が、おかげで随分と　楽になった。
@ENG:

@IDX:20536
@OFF:0x11986
@SPK:
@JPN:　それにしても……あの副院長がそんな苦労人だった　とは初耳だ……。
@ENG:

@IDX:20537
@OFF:0x119d6
@SPK:
@JPN:　身近に先達を見つけた気分がして、親近感さえ湧い　てくる。
@ENG:

@IDX:20538
@OFF:0x11a1e
@SPK:
@JPN:　僕も副院長のように、障害を乗り越えて医者になる　ことができるだろうか……。
@ENG:

@IDX:20539
@OFF:0x11b4a
@SPK:
@JPN:　何もかもが昨日までとは全く変わってしまった。
@ENG:

@IDX:20540
@OFF:0x11b86
@SPK:
@JPN:　今は８時半。
@ENG:

@IDX:20541
@OFF:0x11ba2
@SPK:
@JPN:　部屋に戻ってからウトウトして、気がつくとこんな　時間になっていた。
@ENG:

@IDX:20542
@OFF:0x11bf4
@SPK:
@JPN:　正直これほど自由な時間を持てたのは久しぶりだ。　
@ENG:

@IDX:20543
@OFF:0x11c42
@SPK:
@JPN:　だが、それを嬉しいとは思えない。
@ENG:

@IDX:20544
@OFF:0x11c72
@SPK:
@JPN:　これだけ休んでもなお胃は食事を受けつけず、まだ　目の前を死体がちらついている。
@ENG:

@IDX:20545
@OFF:0x11cd0
@SPK:
@JPN:　結局増えた自由な時間は、全て身体を休めることに　費やさざるを得なかった。
@ENG:

@IDX:20546
@OFF:0x11d28
@SPK:
@JPN:　それほどに、死体洗いは過酷だった。
@ENG:

@IDX:20547
@OFF:0x11d68
@SPK:
@JPN:　だが今日は、これでもマシだ。
@ENG:

@IDX:20548
@OFF:0x11d94
@SPK:
@JPN:　明日からはこの手で死体に触れ、作業をしなければ　ならない。
@ENG:

@IDX:20549
@OFF:0x11dde
@SPK:
@JPN:　それがどれほどつらいことなのか……今はまだ想像　の域を出ないが、それでも一端は垣間見れたように　思える。
@ENG:

@IDX:20550
@OFF:0x11e66
@SPK:
@JPN:　こんな仕事、辞めた方がいいのではないか？
@ENG:

@IDX:20551
@OFF:0x11e9e
@SPK:
@JPN:　感情は辞めろと言い、理性は辞めるなと言う。
@ENG:

@IDX:20552
@OFF:0x11ed8
@SPK:
@JPN:　思考という土俵で、感情と理性がそれぞれ相反する　結論を出している。
@ENG:

@IDX:20553
@OFF:0x11f3a
@SPK:
@JPN:　これ以上あれこれと考えるのはやめた方がいいかも　しれない。
@ENG:

@IDX:20554
@OFF:0x11f84
@SPK:
@JPN:　考えれば考えるほど思考がループに入っていく。
@ENG:

@IDX:20555
@OFF:0x11fc0
@SPK:
@JPN:　これ以上深みにはまったら、それこそ抜け出せなく　なってしまう。
@ENG:

@IDX:20556
@OFF:0x1201c
@SPK:
@JPN:　昨夜と同じく明かりを点けたまま枕に顔を埋めて、　深く静かに息を吸い込む。
@ENG:

@IDX:20557
@OFF:0x12074
@SPK:
@JPN:　考えることに疲れた頭を、枕から薫る日向の匂いが　優しく愛撫してくれる。
@ENG:

@IDX:20558
@OFF:0x120ca
@SPK:
@JPN:　その愛撫に身を任せながら、意識を闇へと落として　いった……。
@ENG:

